「サムスンに入れないの?」は禁句

ちなみに、韓国には旧正月の「ソル」と旧暦8月15日の「秋夕チュソク」など、いわゆる名節ミョンジョルに家族が親の家に集まって、先祖の墓参りをしたり、家庭で祭祀を捧げたりする風習が残っています。

最近はあまり見かけなくなりましたが、先祖の墓の前まで多くの料理を運んで、そこで先祖の墓で簡単な祭祀を捧げ、墓の前で料理を家族全員でニコニコしながら食べる――いま思えばかなりシュールな光景ですが、つい1990年代までそうした姿が珍しくはありませんでした。

シンシアリー『Z世代の闇 物質主義に支配される韓国の若者たち』(扶桑社)

そんな名節のとき、伝統的に「若い人がもっとも言われたくない言葉」の代表が、「サムスンに入れないの?」でした。いくつかのバリエーションがありますが、これを言われるくらいなら親族の縁を切る(祭祀など親族イベントに参加しない)という人も多かったと言われています。韓国は想像を超えた競争社会、特に「教育熱」という名の炎に包まれている社会だということです。

1970年代から、「亡国病」とどれだけ言われたことでしょう。テレビ、ラジオ、さらには子供用の新聞にまで、本当に多くのメディアがこの点を指摘しましたが、いまだに治る気配がありません。

そんななか、2030とされる若者たちが教育を信じなくなり、その結果、信じるようになったのが「投資だけは公正だ」という価値観とは……。まさしく「此は如何に」としか言いようがありません。価値観が変わったという言うべきか、それとも崩れたと言うべきか。

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