太陽風は地球への脅威か太陽系を守るバリアか

太陽の表面を望遠鏡で撮影してみると、盛んに爆発現象が起きています。これを太陽フレアと呼びます。太陽フレアが発生すると、そこから高エネルギーの荷電粒子が大量に噴き出し、太陽系の中を飛んでいきます。これが太陽風です。

「風」と書きますが、地上の風のように生やさしいものではありません。その正体は、高エネルギーの荷電粒子、放射線です。しかも速度も地球上の風より桁違いに大きく、地球周辺では秒速400~800km(時速150万~300万km)にも及びます(※)。こんなものが飛んできたら、ひとたまりもありません。実際、強い太陽風が直撃したことによって故障してしまった人工衛星もあります。

(※)プレジデントオンライン編集部註:国立天文台の講師・平松正顕さんによれば「今回は秒速900km(時速320万km)に上昇したようだ」。

そんな太陽風が飛んできても私たちが無事なのは、地球の磁気圏が守ってくれているからです。しかし、太陽風が地球の磁気圏と激しく衝突することで磁気嵐が起きることがあります。

観測史上最強の太陽風が地球を直撃したのは1859年のこと。イギリスの天文学者キャリントンがもとになった太陽フレアを観測したことから、キャリントン・イベントと呼ばれます。このときには、ハワイでもオーロラが見られたといいます(※)。各地でオーロラが楽しめるだけならまだよいのですが、当時たくさんの人が情報のやりとりに使っていた電報のシステムに障害が起きてしまいました。磁気嵐によって電線に大きな電流が流れてしまったことが原因でした。

(※)プレジデントオンライン編集部註:国立天文台の講師・平松正顕さんによれば「今回もハワイでオーロラが観測されました」。

また20世紀で最大の太陽フレアが起きた1989年には、同じく巨大な磁気嵐によって、カナダの送電線に過大な電流が流れ、停電が広範囲で発生しました。強い太陽風、大きな太陽フレアの発生は、私たちの現代社会に大きな影響を与えてしまいます。

太陽風はもちろん地球までで終わるわけではなく、もっともっとずっと遠くまで太陽系の中を吹き渡っていきます。太陽系の惑星がある領域をはるかに超えて届きます。この影響範囲をヘリオスフェア(太陽圏)、ヘリオスフェアの端をへリオポーズ(太陽圏界面)といいます。

へリオポーズは、太陽から100~150天文単位ほどのところにあると考えられています。1天文単位は太陽と地球の間の距離、約1億5000万kmに相当します。太陽系で一番外側を回る惑星は、太陽から30天文単位のところにいる海王星です。太陽風は、海王星よりも3~5倍も遠い場所まで到達しているのです。

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