アメリカは金正恩の現在地を把握している

【江崎】例えば、我が国で言えば、首相官邸の何階にどの部屋があって誰がいて、何階のどの部屋には普段は誰がいて、といった情報なども全部データとして地図に載せているという話ですか。

【茂田】そういう構想だと思います。実際に私はその情報を見たわけではないので、どこまで進捗しているか分からないのですが、地図に関連情報を全て結びつけようとする構想です。

【江崎】北朝鮮について専門家の人たちと話をしている時、米軍は、金正恩がどの地域の、どの建物の、どの階の、どの部屋にいて、彼がどういう経路で移動して、車に乗る時や列車に乗る時はどういう移動形態で行うのかまで分析して把握して、対応できるようにしているとは聞いたことがあります。ジオイントがなければできないことですよね。

北朝鮮の金正恩総書記とアメリカのトランプ大統領(当時)(写真=ダン・スカヴィーノ/アメリカ合衆国連邦政府/PD-USGov-POTUS/Wikimedia Commons

【茂田】金正恩の行動追跡は間違いなくやっていると思います。だから、金正恩は怖いわけです。

アメリカが先制攻撃でミサイルを撃ってくれば、核ミサイルのように巨大なものでなくても、もしかすると自分がいる所が一発でやられてしまうかもしれないと。

スマホ、監視カメラ、クレカなどから特定

【江崎】そういうレベルまで米軍はやっているわけですか。

【茂田】やっているということです。

【江崎】恐ろしい(笑)。日本はまだ画像情報ですよね。

【茂田】そうだと思います。私が離任した後、どこまで進んでいるかは知りません。進んでいれば素晴らしいのですが。アメリカも最初はイミントでしたが、地図とデータと全て合体させるという構想があり、それで自分たちがやっているのは「ジオ・イント」だと言い出したわけです。

【江崎】あるアメリカ人と話をしている時、半分脅かされ気味に、「2019年11月○日の○時に、君は○○にいたよね。アメリカはそういう発想で情報収集をやっているのだ」と言われました。

【茂田】それは間違いないと思います。

【江崎】非常に驚いて、どうしてそんなことが分かるのかと聞くと、「詳しくは言えないけれど、携帯電話から通信ネットワーク、監視カメラ、クレジットカードの履歴などから、全部総合してそういうふうに特定するのだ」と。「僕なんかを見るのか?」と質問すると、「あくまで例えばの話だ」と言われましたが。