ソニーとAppleはどこで差がついたのか

これがEV市場なら、車という「商品」から、自動運転などの「プラットフォーム」の競争に変わり、最終的にはハード・ソフト・生活サービス全般を含めた「エコシステム」の競争になるということだ。エコシステム全体で、覇権を握った会社が大きな収益を上げる。

1999年頃に、ソニーは当時の史上最高となる13兆4600億円の時価総額を叩き出した。当時はAppleもサムスンも、ソニーに比べればはるかに低い数字だった。しかし今、エコシステム全体の覇権を握ったAppleの時価総額は約382兆円、スマートフォンでハードの覇権を握ったサムスンの時価総額は約50兆円となった。スマートフォンの領域ではほとんど何も獲得できなかったソニーの時価総額は約15兆円だ(※Apple、サムスン、ソニーの時価総額は4月19日現在)

エコシステムを構築し、その覇権を握ることがいかに重要か、わかるだろう。

自動車産業の未来を予測したダイムラーの「CASE」

自動車産業もエコシステムの覇権をかけた戦いになる。こうした競争条件の変化は、2016年9月にダイムラー(現・メルセデス・ベンツ・グループ)が「CASE」という概念で再整理し、発表している。

「C=Connected(ネットワークへの接続)」
「A=Autonomous(自動運転)」
「S=Shared & Service(カーシェアリング・サービス)」
「E=Electric(EV)」

これらの頭文字をとった「CASE」だが、現実の企業を当てはめてみるとイメージしやすいだろう。

「C=Connected(ネットワークへの接続)」はこれまでAmazonが「ただ話しかけるだけの優れたUXでつなげるスマートホーム、スマートカー、スマートシティ」をリードしてきた。「デジタル」「DX」と言い換えてもいい。

「A=Autonomous(自動運転)」はAppleが試みて断念したが、Googleが「周りの世界を利用しやすく便利にする」というミッションの下にリードしてきた。

「S=Shared & Service(カーシェアリング・サービス)」はUberやLyftが「所有からシェア、そして都市デザインを変革する」という形でリードしてきた。

そして「E=Electric(EV)」はテスラが「クリーンエネルギーのエコシステム構築」としてリードしてきたが、現在では世界各国からプレイヤーが参入している。

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