トヨタ・豊田章男社長の「危機感」

筆者は2018年6月に『2022年の次世代自動車産業』という本を上梓した。なぜ4年後の2022年をタイトルにしたかというと、あまりにも変化が激しいので、「もう5年後、10年後を語っている場合ではない」という思いがあったからだ。

この本の中で、トヨタの豊田章男社長(現会長)の「危機感」を次のように紹介している。「次世代自動車産業において主役が交代し、テクノロジー企業などに覇権を握られる可能性があること」、「CASEでの対応が最先端プレイヤーと比較すると出遅れている可能性があること」――。

EV市場であってもEVだけで戦うのではないと、2018年当時からトヨタも認識していた。それが現実のものとなりつつある。筆者はこの変化を次のようにまとめた。

次世代自動車産業をめぐる戦いの構図
(1)「テクノロジー企業vs.既存自動車会社」の戦い
(2)「日本、アメリカ、ドイツ、中国」の国の威信をかけた戦い
(3)すべての産業の秩序と領域を定義し直す戦い
(拙著『2022年の次世代自動車産業』より)

エコシステムを構築するには、ハードとソフトの両方の分野で大企業が複数あることがマストだ。となると、国として戦えるのは日本、アメリカ、ドイツ、中国に絞られてくる。

「スマホシェア世界3位」のメガテック企業

「テクノロジー企業vs.既存自動車会社」の戦いで想定していたのは、2018年当時はAppleやGoogleだった。そこに突如として現れたのがシャオミだ。そしてEVでこれまで「すべての産業の秩序と領域を定義し直す戦い」を仕かけてきたのはテスラだが、そこにシャオミが参入した。

スマートフォン、IoT&ライフスタイル、インターネット・サービスを主力事業とするシャオミは、2010年設立で2018年に香港市場に上場した。インターネット・サービス事業では広告、有料アプリ・ゲーム、動画や音楽の有料配信などを手がけている。売上高ではスマートフォンなどの製造事業が約6割を占めるものの、営業利益ではインターネット・サービス事業が約4割を占める。

シャオミの看板
写真=iStock.com/Robert Way
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アメリカや日本では販売規制などのために体感しにくいかもしれないが、シャオミは2023年のスマートフォン世界シェア第3位のメガテック企業だ。こうしたメガテック企業の特徴として、①プラットフォーム志向であること、②ユーザーエクスペリエンスを重視していること、③「ビッグデータ×AI」志向であることが挙げられる。これはシャオミにもそのまま当てはまる。シャオミの雷軍CEOは「ハードウェア事業の利益率は5%を超えることはない」と明言している。