「仙台の奇跡」とは、仙台市の場合には、新潟からの高圧天然ガス・パイプラインが敷設されていたために、都市ガスの復旧が比較的早く実現したことをさす。このパイプラインは、もともと石油資源開発(JAPEX)が東北電力の新仙台火力発電所向けに敷いたものであり、その後、仙台市ガス局が02年にこのパイプラインと自らの導管とを結んでいた。仙台にはLNG (液化天然ガス)の輸入基地があるが、東日本大震災にともなう津波の被害によって、基地の機能は長期にわたって失われた。もし、新潟・仙台間天然ガス・パイプラインが存在していなかったならば、仙台市における都市ガスの復旧が大幅に遅れていたことは、間違いない。
図2からわかるように、日本の場合には、東海道や山陽道でも天然ガスの高圧パイプラインは寸断されおり、新潟・仙台間に高圧パイプラインが敷設されていたことは、「奇跡」に近い出来事であった。もし、例えば名古屋市が震災・津波の被害にあったとするならば、東西両側で高圧パイプラインが途切れている同市においては、都市ガスの復旧に多くの時日を要することになるだろう。
表1は、各国のガスパイプラインの整備状況を比較したものである。この表の「面積当たり」の項をみれば明らかなように、わが国のパイプライン密度は、他国と比べて著しく低い。
我々が、東日本大震災の経験から導くべき第2の教訓は、天然ガスの都市間パイプラインを抜本的に拡充すべきだということである。まずは、東海道や山陽道を高圧パイプラインでつなぐことが重要である。
天然ガスの都市間パイプラインの拡充は、集中型(系統型)ガス供給網の重要性にもとづくものである。一方、都市ガス地域へのLPガスの配備は、分散型ガス供給網の大切さをふまえた措置である。このように、東日本大震災後の日本では、集中型と分散型のエネルギー供給網を同時に充実させることが求められている。
この点は、ガス事業だけでなく電気事業にも、そのままあてはまる。東京電力・福島第1原子力発電所事故後の計画停電や電力供給不安の経験は、東西間の周波数統一ないし周波数変換装置の拡充、同一周波数域内での地域間連係線の強化など、集中型(系統型)電力供給が取り組むべき課題を浮かび上がらせた。一方で、分散型電力供給網を構築して再生可能エネルギーによる発電を拡大することの重要性も、指し示した。
ガス事業においても電気事業においても、集中型供給網を強化するとともに、それと並行して分散型供給網の拡充を図らなければならない。エネルギー供給のあり方に関して、我々が東日本大震災の経験から導くべき教訓は、この点に求めることができる。