都市ガスの早期復旧を実現した「仙台の奇跡」

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図1 被災3県における各インフラの供給不能戸数の推移(推計を含む)

この『報告書』は、「被災3県におけるLPガスの復旧状況については、大規模な余震が発生し、都度点検を実施して供給を再開しなければならない状況が繰り返されたため、どの時点で完全に復旧したかを示すことは容易ではないが、3月11日に発生した大震災に対する復旧は概ね3月末、全体の復旧は4月21日、というのが業界団体によるLPガスの復旧日である。3県のLPガス供給世帯数は約166万戸あり、発災当日はガスメーターの安全装置によって、自動的にほぼ全ての世帯において、供給が一旦止まったとみられる。その後順次供給は再開されたが、津波によって流出した世帯や、家屋が全半壊、または原発事故の影響のために、短期的に供給を再開することが困難な世帯が、約10万戸存在する」、と述べている。そして、図1を掲げて、「復旧状況を他の主要なインフラと比較すると、LPガスの復旧の早さが改めて確認できる」、と結論づけている。

我々が、東日本大震災の経験から導くべき第1の教訓は、都市ガス普及エリアにも、災害時に備えて、要所にLPガスを配備すべきだということである。具体的には、

□ 避難所になりうる公園や公民館などに、LPGの災害対策用バルクを設置する
□ 福祉施設・病院・学校等にLPGを使う給湯・発電機等を設置する
□ 公営団地等においてLPガスを活用する
□ 平時よりLPガス燃料車を公用車として使用する

などの措置を、都市ガス地域においても講じるべきである。このうち、公営団地等での活用については、都市ガス普及エリア内でもLPガスを導管で供給することができるコミュニティガス(簡易ガス)の仕組みを、規制を緩和して、大いに利用すべきである。

東日本大震災は、ガス事業に関して、我々にもう1つの教訓を残した。それを説明するには、「仙台の奇跡」の話から始めなければならない。