東日本大震災で、被災地のエネルギー供給に大きな役割をはたしたLPガス。分散型エネルギーとしての特徴もあり、今後、期待される役割と課題を検討する。

震災発生からわずか4日で復旧した災害に強いエネルギー

LP(液化石油)ガスは、もともと「災害に強いエネルギー」と言われてきた。今回の東日本大震災でも、LPガスは、その本領を遺憾なく発揮した。

東日本大震災の被災地では、水道、電気、都市ガス、石油製品などの供給再開に相当の日数を必要としたが、LPガスだけは、わずか数日で供給の再開を実現した。

ボンベに蓄えられた「軒下在庫」の存在、震災発生後わずか4日目(3月15日)のLPガス事業者間の相互支援協定の発動、近隣設備の共同利用、石油では実現できなかった国家備蓄の放出(4月4日開始)などによって、LPガス供給の復旧は、他のライフラインに先んじて進行した。

その結果、避難所向けや病院向けだけでなく、仮設住宅へのエネルギー供給でも、LPガスは、大きな貢献を果たしたのである。

この点に関連して、エルピーガス協会会長の川本宜彦(よしひこ)氏は、「月刊エネルギーフォーラム」誌のインタビューの中で、次のように答えている。

「一番の強みは、『分散型エネルギー』であることですね。送電線や導管などのラインで供給する電気や都市ガスでは、地震によって『ラインが破損する』ことで、供給障害が発生します。また、それを修復するには相応の時間が必要です。一方、LPガスはボンベが運べるところであれば、どこにでも供給できる。個別に分散していることで復旧が早いわけです。

また、各家庭などの供給先に『軒下在庫』があることも、災害時には役立ちます。どういうことかと言えば、家庭用のお客さまのところには通常2本のボンベが置かれています。そのうち1本は、予備・在庫という扱いで、ガスがたくさん残っている。これが、災害時には『軒下在庫』として活用できる。

また、LPガスの充填(じゅうてん)所にも、多量の貯蔵・在庫があります。被災地でガソリンが不足した際に、LPガス自動車が活躍できたのは、そのためです」

川本氏の言葉の最後の部分にあるように、震災直後の被災地では、ガソリン車に代わって、LPガスを燃料とするタクシーが大活躍したと聞く。