投資すべきは「インバウンド」より「高付加価値の産業」

日本のものやサービスは海外で売れるとは言っても、最近流行りのインバウンド、要するに外国人観光客に依存する商売を進めていくのは考えものです。

基本的に観光業というのは地元の風景や観光名所の切り売りにすぎませんから自分たちで何かつくり出すような技術やアイディアが発展していくわけではありません。

付加価値が高い機械や技術をつくり出すよりも、地元に観光客を連れてきてホテルに滞在させるほうがはるかに簡単なのです。これはご先祖の遺産を切り売りして生活する子孫とまったく変わりがありません。

しかも日本全体の経済規模から考えると観光業が占める割合というのは非常に小さいのです。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の2022年の調査によると、日本の旅行・観光産業の寄与額は2063億ドルでGDPに占める割合は4.2%にすぎず、海外旅行者の支出が占める割合はわずか0.7%、G20参加国中で最低値なのです。

これはコロナで日本と海外を往来する人が激減したために外国人観光客の支出が90%近くも減ってしまったというのもあるのですが、例年通りだったとしてもGDPの2%にもいかないわけですから非常に小さいわけです。

政府はこれをもっと拡大していくという目論見のようですが、それよりももっと永続性があり、高い付加価値を得ることが可能な産業のほうに投資をしていくべきでしょう。

有望なのは「IT×製造業」

そして日本はこれからどんな業種に注力していくべきなのでしょうか。

まずやはり筆頭にあげられるのは情報通信産業です。ここ最近はAIの発展が注目されていますが、今後はもっと伸びていくはずです。さらに情報通信技術と製造業のハイブリッドが伸びていきます。

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その代表の1つがたとえば自動運転の車であったり、産業機器や家電の自動化、遠隔操作といった世界です。医療や軍事の世界でも、情報通信技術を活用した機器がますます活躍しています。

このような世界では単にサービスや機械を提供するよりも、正確性や継続性が非常に重要です。収集したデータをきちっと管理したり保全したりすることも重要なのです。

これは世界各国でデータ漏洩や独裁国家によるデータの悪用がどんどん外に出てくるようになったからです。

その点、日本は、民主主義国家でありきちっと仕事をする人々が多いので非常に信用性が高いわけです。

しかし、日本は自分たちの強みをアピールする力が本当に弱い。日本人はそれを当たり前だと思ってやっているので海外の人は日本人がそんなに厳密に仕事をしているということを知らないのです。

こういった生真面目さや手順の厳守、コンプライアンス体制の厳しさなどをどんどんアピールしていくことも重要でしょう。しかも日本には多様性がないと批判されていますが多様性がないということはある意味強みになるのです。

それは国内で働く人々が日本人だらけで出身校や出身地がはっきりしていますから、バックグラウンドチェックが非常に容易だということです。

ダイナミックなプロジェクトを立ち上げたり変わったことをやるのには多様性がないことは不利になりますが、その一方でいい点もあるということは強調していくべきなのです。