ところが、ソーシャルメディアが一般に普及することで、守秘義務規定に明記されていないような「軽い情報」でも、大きなトラブルが起きるようになり、態度が変わった。就業規則や服務規定で、ソーシャルメディアの利用について注意事項や制限を設ける企業が次々と現れた。トラブルが起きたときに、「違反」を問えるようにしているのだ。

トラブルが増えている最大の要因は、発信速度の上昇だろう。10年ほど前までは、「HTML」というプログラミング言語を知らなければ、ネットでの情報発信はできなかった。2000年中ごろからブログが普及して、敷居が下がったことで、トラブルが増え始めた。今ではスマートフォンを使って、いつでも、どこでも、書き込みができる。内容を吟味したり、推敲を重ねたりする時間は、格段に短くなった。思いついてから、書くまでの速度が上昇している。

それに伴い、情報が拡散するスピードも速くなった。些細なトラブルが、急速に注目を集め、新聞沙汰にまで発展する。こうした「炎上」を起こすと、同じ職場で働き続けることは難しくなる。「軽い情報」の漏洩では、解雇はされなくても、譴責などの処分を受け、事実上の退職に追い込まれるケースも見受けられる。

インターネットの怖さは、書き込んだものが、いつまでも残るという点だ。違法に書き込まれた内容であっても、管理者でなければ削除ができない。また「炎上」すると、次々と転載が繰り返されるため、削除申請が追いつかず、半永久的に残ってしまう。個人名が晒されている場合には、氏名を検索されるたびに、過去のトラブルを知られてしまう。

トラブルを避けるには、ソーシャルメディアを利用しないことが一番だ。しかし、今やソーシャルメディアは情報社会のインフラとして普及しつつある。まったく利用しないのも難しいだろう。「友達」を増やすことへのリスクを理解したうえで、節度をもった利用を勧めたい。

(構成=大山貴弘 撮影=坂本道浩)
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