相手にケガさせたら即、逮捕?

飲み屋でたまたま隣り合わせた客に因縁をつけられ、小競り合いから乱闘に発展。自分は無傷だったが、相手にケガをさせてしまった。こんな場合はどうなるでしょうか。

表を拡大
「正当防衛」と認められる要件とは

まずは逮捕されるかどうかですが、相手のケガが軽度で、あなたに逃亡や罪証隠滅の恐れなしと判断されれば、強制的に身柄を拘束される逮捕ではなく、任意での取り調べとなる可能性のほうが高いです。取り調べの結果、「事実を正直に話して反省している」ということになれば早期に釈放されることが多く、家族が迎えに来ればその日のうちに帰してもらえることも多いでしょう。

ところが酔った勢いで警官に逆らったり取り調べに協力しなかったりすると、場合によっては公務執行妨害などの理由で逮捕され、少なくとも2~3日は留置されることに。となれば当然出社できず、「あいつ、暴力沙汰でブタ箱にぶちこまれたらしいぜ」と噂になりかねません。こうなると痴漢の冤罪と同じで、あとでいくら正当防衛が証明できたとしても、いったん広まった悪いイメージを払拭するのは難しいでしょう。

また事件当日は何もなくても、安心するのはまだ早い。後日、相手が病院の診断書を持って警察に被害届を出すことがあります。「行きずりの相手が自分の素性を知るはずがない」と思っても、人にケガをさせればそれは傷害罪に当たるので、捜査機関が動くこともあり、そうなれば身元などすぐに突き止められます。

「最初にからんできたのは向こうのほう。いわば正当防衛だ」と主張すればどうでしょう。正当防衛が認められるのは、危機が迫っているとき、生命や身体を守るためにやむをえず応戦したときだけ。また自分の攻撃が相手の攻撃と同程度であることも重要で、攻撃しすぎれば過剰防衛に。基本的に素手には素手で、ナイフにはナイフで応じれば正当防衛になりますが、ナイフに対して銃を持ち出せば過剰防衛になります。さらに体格差や年齢差なども考慮するので、この線引きは法律家の間でも常に論議の的となるところです。