また「すぐその場で」攻撃したのかどうかもポイントで、相手がもう攻撃をやめているのにまだ殴り続けたとか、数日前のことを根に持ってやり返したというのは正当防衛とは認められません。ただ意外なことに、相手のケガの程度は正当防衛かどうかには無関係。問題は行為の結果ではなく、行為そのものだからです。極端な例では、「殴られそうになったので相手の腕を振り払ったら、相手が転倒し、打ちどころが悪くて死んだ」という場合でも、正当防衛で無罪になることもあるのが法律の世界。

ただし正当防衛だったことを証明するには、一部始終を見ていた人の証言や、監視カメラの映像などが必要です。もし正当防衛であることを証明できなければ、刑事処分を受ける可能性があるのはもちろん、民事上でも相手に損害賠償をしなければなりません。ただ、喧嘩の中でのケガである以上、相手にも落ち度があるといえ、その落ち度に応じて賠償割合を決めることとなります。つまりケガの治療費や慰謝料、ケガで仕事を休んだせいで得られなかった給料などが仮に全部ひっくるめて100万円で、相手の落ち度が全体の3割だったとしたら、その分を相殺してこちらは70万円だけ支払えばいいということです。

ちなみに「酒に酔っていたので責任能力はない」という言い訳は認められません。そもそも酔うと粗暴になる人はお酒を控えるべきだからです。もしトラブルになりそうなら、悔しくてもグッとこらえてすぐに店を出ること。それが本当の男らしさだと思いますよ。

(構成=長山清子 撮影=坂本道浩)
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