日本は「安い国」から脱却する必要がある
ではこのインバウンド消費を、どうすれば日本経済復活の切り札にできるのか。それを考えなければ、ただただ、通貨が弱い国に、通貨が強い国の旅行者がやってきてお金を落とすが、結局その通貨が弱い国はなかなか経済成長しない、かつて日本人がアジア諸国で大名旅行したのと真逆の状況が続くことになる。通貨が安いから「何でも安い国」として世界から人々が集まってくるというのではなく、日本の価値を見出して人々が訪れる、そんな観光国に脱皮していかなければならない。フランスを訪れる理由は「安い」からではない、というのは考えてみれば分かる。つまり、日本も「安い国」から脱却していく必要がある。
せっかく世界から人々が集まっているのに、「安さ」を売りに儲けることをしなければ、いつまで経っても通貨安は解消されない。逆にますます円安が進んで、ますます「安い国」に転落していくことになる。外国為替市場では、ついに1ドル=160円台を付けるなど、円安が止まらなくなっている。これは日米の金利差だけでは説明ができず、国力が大きく低下していることに他ならない。
「世界標準の価格を付けること」が大きなポイント
ではどうするか。
まずは、今のインバウンド観光できっちり儲けることだろう。外国人にせっせとお金を落としてもらうことで、日本の企業や事業者が儲けて、それを働く個人に還元していくしかない。観光に付随する事業はダイレクトに「川下」つまり最終的な事業者にお金が落ちる。旅館やホテルだけでなく、土産物店や飲食店、観光ガイドに至るまで、直接、現金を受け取れる。儲かれば翌月から給与を引き上げることもできる。輸出産業の場合、円安がメリットになるといっても、資金回収に数カ月かかり、それが取引先などに波及し、川下の事業者を潤わせて給与に反映されるには相当なタイムラグがある。それだけ観光業というのは短期間に大きなインパクトを与える産業なのだ。
その際、大きなポイントは「安売りをしない」こと。そのためには世界標準の価格を付けることだ。
京都など観光地では、新型コロナで旅行者が激減して建築需要が落ち込んでいた間に、外国ホテルチェーンが高級ホテルを建設、今やそれをフル稼働させている。しかも、日本人から見たらとんでもない高値で販売している。ホテルで1泊1室10万円以上が当たり前になっている。これにつれて、日本のホテルも値上げを始めているが、まだまだ外資系ホテル並みには行かない。「そんな値段にしたら日本人が泊まれなくなる」といった“良心的”な声を聞く。