残留農薬や食品添加物なら「却下」レベル

じゃがいもの安全マージンは数倍、というところでしょう。だから事故が起きます。化学物質(遺伝毒性のないもの)については国際的には、摂取量と健康影響が見出される量の間が100倍以上離れていれば、安全上の問題は生じないだろうと判断されます。

残留農薬や食品添加物の場合、安全マージンが100倍以上あります。それに比べて、じゃがいもは安全マージンが小さく、前述の畝山さんは「欧米で今、じゃがいもに含まれるアルカロイドが農薬などの規制対象物質と同じように審査されたら、却下されるレベル」と言います。

欧州食品安全機関(EFSA)の消費者への注意喚起。皮を剥くのがリスク低減に効果的であることや、茹で調理で湯にグリコアルカロイドの一部がうつること、フライ調理でも油に一部が移行して、摂取量を低減できることなどを伝えている

毒性物質を含む食品はじゃがいもだけではありません。どの食品も多かれ少なかれ、こうした化学物質を含んでいますし、加熱していない生の食品は微生物やウイルスも含み、しばしばリスクとなります。

コメでさえもリスクにつながる物質を含む

日本に住む多くの人にとっての主食であるコメでさえも、大量摂取が健康被害につながる物質を含みます。コメは、無機ヒ素やカドミウムが比較的多く、内閣府食品安全委員会はヒ素について「食品からの摂取の現状に問題があるとは考えられないが、一部の集団で多く無機ヒ素を摂取している可能性がある」としています。平均的な日本人で安全マージンはおおまかに見て10倍程度です。

カドミウムもコメが主要な摂取源で、食品安全委員会が決定した「耐容週間摂取量」(TWI)は、推定摂取量の3倍程度です。

安全マージンが小さいため、コメの現在のカドミウムや無機ヒ素含有量では、コメの摂取量を増やすことは軽々には勧められません。農林水産省は低減のための品種改良や栽培時の水管理の変更指導などに力を入れています。コメはそのほか、カビ毒の懸念もあり、農林水産省は「米のカビ汚染防止のための管理ガイドライン」も策定して、関係者に管理を求めています。