フォーマットが自由ゆえに見やすく作られている

決算短信や、四半期報告書を含む有価証券報告書は、あらかじめフォーマットが決められています。したがって、会社独自の表記はできません。

その意味では非常に堅苦しい開示資料とも言えるのですが、最大のメリットは他社比較が容易にできることです。

会社ごとに表現方法がバラバラだったら、必要な項目を探すのもひと苦労です。したがって、表記方法が統一されていることは、決算書を素早く読み込むためにも、とても便利なのです。

これに対して、開示資料の一種ではありますが、有価証券報告書などに比べてはるかに自由な表現が可能なものもあります。「決算説明会資料」がそれです。

ちなみに、決算短信は証券取引所によって、有価証券報告書は金融商品取引法によって、作成・開示が義務付けられていますが、決算説明会資料はなんの義務もありません。会社によっては、いっさい作成していないところもあります。

作成・開示すらなんの縛りもないのですから、表現方法が自由なのも当たり前と言えば当たり前です。実際に複数社の資料を見比べると、その違いがよくわかります。

恐らく、決算短信や有価証券報告書に比べて、非常にわかりやすいと思います。見どころとなるべき数字を大きく表記したり、過去からの業績推移をグラフや一覧表で表したりと、有価証券報告書に記載されている無味乾燥な文章とは違い、極めて平易な書き方がされています。

決算説明会資料は会社のすべてを語るものではない

ただし、2つほど注意点があります。

まず、決算説明会資料だけでその会社の本当の姿を知るのは難しいということです。なぜなら、ここに記載されている内容の多くが損益計算書に基づいた情報だからです。貸借対照表に代表される財務情報は、ほとんど掲載されていません。

次に、会社側が好きなように作成できる資料なので、自分たちにとって都合の悪い情報を、意図的に隠している恐れがあることです。

逆に、掲載されている情報は、会社にとって都合のいい情報ばかりの場合もあります。

さらにもうひとつ言うならば、決算説明会資料は誰のチェックも受けていないということです。

もちろん、社内チェックはありますが、有価証券報告書のように、監査法人のチェックは受けていません。決算短信も表向きは監査法人のチェックを受けていないことになってはいますが、前述したように決算短信と有価証券報告書の数字に違いがあるのは望ましくないので、実際には、ほとんどの場合において、監査法人が目を通しています。つまり決算説明会資料は、決算短信や有価証券報告書に比べて信頼性に劣るとも言えるのです。