住宅業界2位の積水ハウスの「在庫金額」が膨らんでいる。この結果、業界1位の大和ハウス工業と比較すると、棚卸資産回転期間は2倍だ。こうした在庫水準は適正なのか。公認会計士の川口宏之氏は「積水ハウスが大和ハウスのマネをせず、独自戦略を採っている証拠だ」と分析する——。

業界トップの大和ハウスを上回る在庫金額

新築住宅着工戸数が減少する中で、積水ハウスが奮闘している。第2四半期(2019年2月~7月)の業績は、大幅な増収増益となり、売上高と営業利益は同期間で過去最高となった。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Manmarumaki)

ただし、売上高と在庫金額(棚卸資産)には特記すべき点がある。ハウスメーカー業界2位の積水ハウスは、売上高では業界1位の大和ハウス工業の約半分であるにもかかわらず、在庫金額は大和ハウス工業を上回るという逆転現象が起きているのだ。

この積水ハウスの在庫水準は適正なのか。ここでは「棚卸資産回転期間」という経営指標で検証してみよう。あまり注目されない経営指標だが、不動産業界においては重要な経営指標である。

棚卸資産回転期間とは、会社が仕入れから出荷までにどのくらいの期間を要しているかという、在庫の平均保管期間のことだ。以下の計算式で算出することができる。

棚卸資産回転期間(日)=棚卸資産/(売上原価÷365日)

業種によって棚卸資産回転期間は大きく異なる。小売業の場合は20~30日程度、製造業の場合は製造工程が入る分、40~50日程度とやや長め。飲食業の場合は食材がメインなので、10~20日程度となるのが一般的だ(寿司すしチェーンなど保存できない食材を扱う飲食店であればもっと短いだろう)。