職場でボロボロになり家庭をボロボロにして一人に…

ただ、そのような大きな社会問題や構造をよくしようとしても、ミクロな人間関係の問題はすぐに解決できません。大切な人を大切にして生きていきたいのであれば、そのようなストレスがあろうと、余裕がなかろうと、なんとかケアを始めていく必要があります。

実際にパートナーとの別居や離婚という事態に陥った場合に、「もう働く意義もない」といって仕事を辞める人や、病気になる人、自死を選ぶ人がいます。「こんなことになるくらいなら、もっと家庭を大切にしたらよかった」と嘆く人は本当にたくさんいます。

そうすると、一体何のためにそれほど身を粉にして働いていたのでしょうか。

職場でボロボロになり、家庭もボロボロにして、最後には一人になってしまう。

こんなに悲劇的な結末はありません。

結局のところ、人はお金を稼ぐために生きているのではないのだと思います。お金は目的ではなく手段です。生きる目的とは、自他共に持続可能な形で、美徳を発揮して、ケアしあえる関係、すなわち幸福を生きることです。

これはパートナーシップや親子関係に限った話ではありません。職場の関係も、友人関係も、趣味のつながりもそうです。

働き方改革の本質は、単に職場の改善にとどまるものではなく、人の人生、命に関わることなのだと思います。

大切な関係を大切にできるためには、職場が命の全てを消耗するような場であってはなりません。

職場での自分の加害性を認める

働き方改革と聞くと絵空事や綺麗事のように感じるかもしれません。しかし、働きやすい職場を作っていかなければ、現実が苦しくなり続けていきます。ボロボロになるまで働いて、自分も周りも傷つけて、孤独になるために仕事をしている人などいません。

今いる職場の文化や制度を変えるのは本当に大変です。どうしても難しい場合は転職も視野に入れる必要もあるかもしれません。自分1人でできることには限界があります。上司・同僚・部下・取引先・顧客など、家庭やパートナーシップと比べて関係者も多いです。

この問題に向き合うために、僕は「変わりたい」と願う職場での加害者のためのCoNeCa(コネカ)という自助団体も立ち上げました。

実は、職場での自分の加害性を認めることができる人は少なくありません。GADHAに参加している人の中には、元々はパートナーとの関係を課題に感じて参加したものの、職場での問題に気づく人もたくさんいます。