自分の心に素直になれない人のリスクは何か。精神科医の和田秀樹さんは「言葉と行動が一致しない人は、自分で矛盾を作り出している。会社を辞めたり、パートナーと別れたり、その場から逃げるのは勇気の要ることだが、だれでもいいので、『つらい』『大変だ』『もう無理』という言葉を吐き出すといい。弱音を吐くことは、負けではない」という――。
※本稿は、和田秀樹『逃げる勇気』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
周囲の「がんばれ」に隠された意図
「もっとがんばらなきゃ」と思っている人に、周囲の「がんばれ」という言葉はとても残酷です。「いまよりもっと、がんばらなければ」という考えに支配されてしまいます。
期待してくれている人を悲しませたくない、がっかりさせたくないという思いから、無理して気丈にふるまうようになります。
「がんばれ」という側の深層心理には、「あなたががんばってくれないと、私が困る」という隠された意図が存在することがあります。
そして、その意図に本人自身も気づいていないこともあります。
親や教師、上司、会社の人事部の人など、「あなたのため」というのはあくまでも建前であって、ただ単に「自分本位」であることも少なくありません。
自分本位とは、自分のことしか考えないこと。自分に都合が良いこと。
いくつか自分本位の例をあげてみましょう。
・途中で投げだすのを許してしまうと、相手に怠け癖・逃げ癖がついてしまうのではないか。
・逃げるのを止めないと、のちのち自分の責任になるかもしれない恐怖。
・「継続は力なり」という言葉があるように、継続すれば身につけられる力があるという誤解。
・最後まであきらめない“グリット”を身につければ、将来的に叶えたい目標を達成することができる。
・安易にあきらめを許して、甘やかしてはいけない。
・親の育て方が悪い、指導の仕方が悪いと、周りから責められたくない。