FA市場は合理的ではない…

【トモヤ】山本由伸は、大谷に次ぐFA市場の目玉で2億ドル以上の契約になるだろうとは言われていたけど、なんと総額3.25億ドルでドジャースが獲得した。フルタイムの投手(つまり大谷は除く)の契約としては史上最高額。これには驚いた?

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【サム】彼は3.25億ドルの投手ではないかもしれないけど、それが市場での価値だということ。誰が争奪戦に参加していたかを考えてみて。ドジャースにヤンキースにメッツといった、金に糸目をつけないチームだよ。FA市場について合理的に考えることはできない。「FA選手に、その価値に見合った額を提示したら獲得なんかできない」と言われている。いくらであろうと、払う球団があれば、それが価値になるんだから。

メッツも山本に同額を提示していた。それでもドジャースを選んだってことは、ドジャースに行きたかったんだろうね。大谷と一緒にプレーしたかったとか、ロサンゼルスに行きたかったとか。

【ディラン】僕は驚いたよ。メジャーで投げたことがない選手だからね。メジャーに来た日本人投手はみんな、メジャーで投げる難しさは、レベルが高いということよりも、肉体への負担にあると言う。レギュラーシーズンは162試合で、日本の143試合よりも多い。日本では毎週休養日があるけど、メジャーにはない。先発投手は、日本では1週間に一度しか登板しないけど、こっちでは5日に一度。それに山本は身長178センチとメジャーではかなり体が小さいのも、メジャーの負担量に耐えられるか心配な理由ではある。それなりに活躍するとは思うけど、3.25億ドルに相応しいエースになれるかは分からないな。

巨額の後払い契約がドジャースを変えた

【トモヤ】ドジャースは、大谷と山本とグラスノーの三人に11億ドルものお金を費やしている。これは何がなんでも勝つという決意の表れだと見ていいのかな?

【サム】もうプレーオフで辛酸をなめるのはこりごりだっていうことだろうね。21年はブレーブスに負けて、22年はパドレスに負けて、23年はダイヤモンドバックスに3連敗。レギュラーシーズンの成績を考えれば、ワールドシリーズで優勝すべきチームなのに。

多くの人がプレーオフは運任せだと思っているようだけど、僕は「最強同士の争い」だというふうに見ている。どのチームも戦力を温存などせずフル稼働させる。そういう中での最強を決める戦いなんだ。ドジャースは、そうした中で勝てる投手陣や野手陣が整っていなかった。あまりに早くプレーオフ進出を決めすぎて、意味のある試合をしていない期間が長くなって、力を発揮できなくなっていたのもあるかもしれない。大金を費やして補強しているのは、そうした状況から抜け出すんだという決意の表れだと思う。地区優勝はもはや当然のこと。ワールドシリーズ優勝以外は、もはや失敗と見なされる。

【ディラン】これはドジャースというより大谷の決意を表していると思う。大谷が後払い契約によってドジャースに金を渡して、それを球団が山本やグラスノーに投資しているだけ。ドジャースは大谷を獲得していなければ、山本もグラスノーも獲得していないと僕は思っている。すごく残念なオフシーズンになっていたと思う。ここ最近のドジャースは、補強にそこまでお金を使っていなかった。何がそれを変えたのか? 大谷の獲得と、巨額の後払い契約だよ。