人材マネジメントはリスクの高い意思決定である

新卒採用におけるインターネット活用にはほかの批判もあり、なかでも頻繁に指摘されるのは、多数の企業が並ぶので、名前の知られていない企業が目立ちにくくなり、本来であれば、インターネットにより学生に近づきやすくなるはずの中小・中堅企業が、かえって学生から遠ざかるという悪影響であり、全体的に見て、そろそろ何らかの変革が必要な時期にきているのである。

したがって、上記の楽天スキームに企業が関心を示すとしたら、恐らく、従来のインターネット採用の問題点を少しでも解消してくれる可能性が理由なのである。まず記事にあるように、楽天自身が初期の選抜を行い、それをもとにサービスを利用した企業が選抜者にメールを送る、という点なのである。つまり、採用の初期段階を楽天が代行するのである。そこで行われるコミュニケーションがどんなに演技の可能性があるとわかっていても、一定数の絞り込まれたリストがあがってくる。また、ここでリストに載った候補者は、ES経由ではないルートから絞り込まれた学生なのである。うがった見方をすれば、SNS演技力(ある種のコミュニケーション能力?)の高い学生を集める手段として位置付けられるかもしれない。これらがあるので、おそらくこのサービスへの潜在ニーズがあるのだろう。

新卒採用の世界は、現在、試行錯誤の状態なのである。企業としてみれば、自分の企業にマッチした優秀な学生を必要なだけ採るのがポイントであるはずだ。そのために今後何を考えていけばよいのか。期待の高かったインターネット採用はそれほどの成果をあげず、逆に副作用が大きかった。多くの企業が新卒採用の新たな方法を模索している。

やはり最も重要なポイントは、可能な限り学生と直接向き合い、企業が求めるものを伝え、彼ら、彼女らの能力と適性をきちんと判断する機会を設けることであろう。それを行うための準備作業が、ESだという声も聞かれよう。でもESというのはあくまでも間接的な接触であり、またお化粧可能な媒体なのである。

新卒採用を効果的にしたいのであれば、ESなどを使うにしても、機会を設けて、学生と接触し、企業の理念と戦略をきちんと伝え、彼ら、彼女らを評価する場面をつくることである。中小・中堅企業はそうすることの重要さを知り、いくつかが必死で努力している。だが、多くの学生は、大手企業を中心に十分なメッセージをもらっているとは考えていない。