ビジネスとして「スポーツリーグ」が後押し

私が昨年ラスベガスのT-モバイル・アリーナでプロアイスホッケーの試合を観戦したときも、隣に座ったアメリカ人男性が、スポーツベッティングした内容を誇らしげに話してくれた。彼のように、スポーツベッティングをしながら試合を観戦する姿は珍しくはない。

2018年まではアメリカでもスポーツ賭博は禁止されていたが、連邦最高裁判所が「各州に判断を委ねる」という決定を下してからのちは合法化する州が相次ぎ、いまでは40州近くが合法と見なしている。なお、大谷選手と水原氏がいるカリフォルニア州は、スポーツベッティングを合法と認めていない州の1つだ。

筆者撮影
ラスベガスで行われたプロアイスホッケーの試合。筆者の隣に座ったアメリカ人男性は「スポーツベッティング」をしながら観戦していた

さらに、スマホで気軽にベットできることも拍車をかけている。専用アプリは使い勝手がよく、ファン・エクスペリエンスが極めて高い。

スポーツリーグの後押しもある。スポーツリーグのビジネスは、スタジアムやアリーナの入場料収入、テレビの放映権収入、スポンサー収入、グッズなど物販収入で成り立っている。スポーツベッティングやファンタジースポーツを通して熱心なファンが増えれば、観客動員数が伸び、高い視聴率が獲得できて、放映権収入やスポンサー収入が増えるという算段がリーグ側にはある。

スマホで手軽になるほどギャンブル依存症は増える

例えばバスケの試合で「次のフリースローを外すのは誰か」などの細かいベットは、試合会場で観戦したくなる。試合結果だけが賭けの対象ではないから、テレビ画面にかじりついて観戦する人もいるだろう。シナリオがあるテレビゲームと違って、現実のスポーツは次の瞬間に何が起こるかわからない。だから、ゲームよりおもしろいという見方もある。

一方で、スポーツベッティングの問題点も取り沙汰されている。第一は、ギャンブル依存症の増加だ。

アメリカではここ数年、ギャンブル依存が社会問題となっている。特にスポーツベッティングは、テレビで試合を観ながらスマホで簡単に賭けられることから、のめり込みやすい。

水原氏の賭け金が約6億8000万円だったと聞いて、驚いた読者もいるだろう。日本では、億単位でギャンブルに負ける人はめったにいないからだ。しかしラスベガスなどのカジノでは、一晩に数百万円、数千万円の勝ち負けが珍しくない。違法賭博であれば、負け金額が億単位にのぼっても、アメリカでは日本ほど驚かれない。