ギャンブル依存はアメリカの社会問題になっている
記事の後半は、スポーツベッティング(スポーツ賭博)の問題について解説している。要点のいくつかを紹介しよう。
○ アメリカの議会は、スポーツベッティングが爆発的に増加している問題を無視している。
○ 多くの州で「ギャンブルヘルプライン」への電話が急増し、300%に達することがある。
○ 昨年NCAA(全米大学体育協会)が委託した調査によると、男子大学生の3分の1が月に数回以上はスポーツに賭けることがあり、全回答者の60%が「試合の途中で賭けたことがある」と答えたという。
○ 連邦選挙委員会のデータでは、カジノ業界を代表する業界団体「米国ゲーミング協会」の政治活動委員会は、2017年以降、30万ドル(約4500万円)以上を選挙時に献金した。
○ ラトガース大学ギャンブル研究センター所長のリア・ノワー氏は「ギャンブルが美化されている」と述べ、かつては裏に隠されていた賭博が表に出てきたと指摘した。野球のテレビ中継で、選手が本塁打を打つ確率のライブオッズをアナウンサーが口にすることもある。
ギャンブル依存はいまやアメリカの社会問題であり、「POLITICO」は政治問題としても取り上げていることがわかるだろう。
バスケットボールのNBAもリアルタイム賭博が可能に
イギリスの新聞「The Guardian」も3月22日の記事で、水原氏のスキャンダルについて経緯や不明点を解説し、MLBなどスポーツリーグ側の姿勢にフォーカスしてスポーツベッティングやギャンブル依存症の話題を展開した。要点をまとめると以下のようになる。
○ アメリカのあらゆるプロスポーツリーグと同様、MLBは合法的なギャンブルの受け入れを急いでいる。
○ 昨年MLBは、ファンタジースポーツ大手の「FanDuel」とパートナーシップを結び、「これまで以上にファンの視聴と賭けの体験を身近にする」と発表した。
○ バスケットボールのNBAは3月19日、ストリーミングサービス「NBA League Pass」にリアルタイム賭博の機能を加えると発表。リモコンをクリックするだけで、「誰が次のリバウンドをつかむか」「誰が次のフリースローを外すか」などに賭けられる機能だ。
○ アメリカにはギャンブル依存症の増加という憂慮すべき兆候がある。「アメリカのほとんどの州で、ギャンブルヘルプラインへの電話は膨大な数で増加している」と、UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のギャンブル研究プログラムの共同ディレクターであるティモシー・フォン氏は12月にガーディアン紙に語った。
○ 複数の調査機関によると、アメリカ人では成人の19%が2022年に賭け事をしている。そのうち6%はギャンブル専用アプリを使用している。同アプリを使用した人のうち53%がスポーツの試合中に賭けている。
○ 試合中のプレーに賭けられると視聴率が上昇し、視聴者をより長く引き留められる。スポーツリーグはテレビ放映権の契約でより強く交渉できる。
○ 野球のストップ&スタートという性質、MLBの試合数(NFLの272試合に対してレギュラーシーズンは2430試合)を考えると、他のスポーツに比べて野球は賭けられる回数が多い。