「優秀な若手ほど辞める」を食い止める方法はあるのか

第2位は、前著『ゆるい職場』において、職場を「ゆるい」と感じる若手社員の離職傾向が強いことを指摘して読者を驚かせた古屋星斗さんの『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』でした。

古屋星斗『なぜ「若手を育てる」のは今、こんなに難しいのか』(日本経済新聞出版)

本書では、若手が活躍できる職場のつくり方や「優秀な人材ほど辞める」への対応策などを提示しています。

まず知っておきたいのは、若手が成長し活躍できる新しい時代の職場に必要な要素として「心理的安全性」と「キャリア安全性」が挙げられること。

職場のキャリア安全性とは「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できないと感じる」「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられているように感じる」という不安がどの程度その職場で解消できるのかということ。職場のキャリア安全性が乏しいと、若手は不安を感じ、それが離職につながるのだといいます。

また「優秀な若手ほど辞める」を食い止める方法の仮説として、「囲い込まず、外の体験を与える」「短期で成長実感が得られる業務にアサインする」「褒めるだけでなく、フィードバックもしっかりする」「本人の合理性を超えた機会を提供する」の4つが挙げられています。これらを知っているだけでも、若手社員との接し方が変わってくるでしょう。

入社や配置換えのある春、必ず読んでおきたい一冊です。

朝と夜の過ごし方を変えることで活力を養う

第3位には『アドラー流 気にしないヒント』がランクインしました。

岩井俊憲『アドラー流 気にしないヒント』(三笠書房)

アドラー心理学を日本に広めた第一人者、岩井俊憲さんが、普段の生活で使えるアドラー心理学を教えてくれる一冊です。

まず取り入れたいのは「オセロ・ゲームの生活」を心がける習慣。朝と夜の気持ちを意識的に「よいもの」にしようとする習慣です。

例えば、朝は気持ちよく起きて出勤(=白のオセロが置かれる)。日中には顧客のクレーム対応をしなければならない(=黒のオセロが置かれる)こともあるものの、夜は家族とゆったり過ごして穏やかな気持ちで眠る(=白のオセロが置かれる)――。この生活であれば、昼に黒のオセロが置かれても、朝と夜に白のオセロを置かれているので、間にある黒のオセロを白のオセロに変えられるのです。

これはアドラー心理学の「勇気づけ」の手法です。勇気づけとは、「困難を克服する活力を与えること」。白のオセロばかり置ける人はいません。それでも少しずつ白のオセロを増やそうと意識することで、困難を乗り越えられるでしょう。