そもそも、現在トラックドライバーの労働時間を無駄に長引かせている最大の要因は、荷主側が強要する「荷待ち」や「待機時間」にある。
こうした「待ち」の時間が長いがゆえに、ドライバーは「勤務時間」ではなく「拘束時間」で基本的なルールが決められているわけだ。
ドライバーが危険を冒して今より1.5時間早く現場に着いても、そこで3時間待たされたら何の意味もない。
現在、この荷待ち時間を短縮すべく、国や荷主も動いてはいるものの、施行を迎えた現在においても、現場からは「荷主から全く呼ばれない」、「6時間待った」といった声は非常に多く聞こえてくる。
これの何が「働き方改革」なのか
2019年、一般則で「働き方改革」が施行された際も「残業ができなくなって給料が減った」という声があったが、歩合制で働くドライバーにとってはその比ではない。
実際、すでに長時間労働改善に動いた企業に勤めるトラックドライバーのなかには、「月の給料が5万~6万円減った」というドライバーもいる。
ドライバーの賃金は、全産業平均と比べると、大型トラック運転者で約4%、中小型トラック運転者で約12%も低い。なかには「時給に換算したら500円」というドライバーまでいるなか、これ以上の賃金低下となると、生活水準すら満たせなくなる。
こうしたことから、現場のドライバーのなかで前向きに検討されているのが「副業」だ。
以前、筆者がSNSで取ったアンケートでは、ドライバーの6割以上が副業をポジティブに検討・またはすでに行っている。
つまり、労働環境改善のための「働き方改革」のせいで、ドライバーが休日や休息を返上して副業をしなければ生活すらままならなくなるなか、睡眠不足の状態で今まで以上に速度を上げ、今まで以上に重くなったトラックを走らせなければならなくなるうえ、急ブレーキをかけて荷物が崩れても、結果的に運ぶ側の責任になる、のが「働き方改革」が現場にもたらした結果なのだ。
1日から施行される物流業界の働き方改革は、トラックドライバーのためのものではなかったか。
これの何が「働き方改革」なのだろうか。
こんな改革、もうやめてしまえ
上げなければならないのはトラックの「速度」ではなくドライバーの「賃金」だ。
現場を知らない、トラックに乗ったことのない人たちが、一部の企業や組織に都合のいいように机の数字だけでルールを作る不条理。
その結果、「荷の次」にされるドライバー。
もう一度言っておく。
当事者であるドライバーを疲弊させる「働き方改革」ならば、もうやめてしまえ。