阪神高速で起きた悲惨な事故を忘れてはいけない
トラックが絡む事故として記憶に新しいのは、今冬に起きた阪神高速の事故だろう。
今年1月、神戸市の阪神高速湾岸線において、渋滞中の車列にトラックが突っ込み、車4台が絡んだ玉突き事故が発生。
トラックとトラックの間に挟まれ亡くなった70代の夫婦が乗っていた軽自動車が、30cmにまで潰れていたという情報は、トラックドライバーたちの間でも衝撃をもって拡散された。
速度が引き上がった現時点において、本当に性能のいいトラックばかりが走っているのであれば、このような追突事故は起き得ない。
2024年問題の1つとして「積載効率の改善」が進むと、トラックの積載率は上がり、トラックはこれまで以上に重くなることも忘れてはならない。
満載したトラックが速度を今まで以上に上げて走ることになれば、起こした事故はより悲惨なものになるのだ。
荷崩れのリスクが高くなる
車両が前に向かって走っているとはいえ、トラックドライバーにとってこのスピード増による影響は、「前方」だけではない。
走行中に急ブレーキを踏むと生じるのが「慣性の法則」だ。たとえドライバーが急ブレーキを踏んでも、積んである荷物は前進しようとする。そのエネルギーは当然、出していたスピードが速ければ速いほど大きくなる。
そうすると荷台で生じるのが「荷崩れ」だ。急ブレーキをかけると積んでいた荷物は慣性の法則によって、前のほうに荷崩れを起こす。
荷台の前にあるのは、「運転席」だ。慣性の法則によって崩れた荷物は、時にドライバーのいるキャビン(運転席)を潰してしまうことがあるのだ。
ドライバーはそのため、高速道路などで急ブレーキを踏む際、「前の追突」と「後ろからの荷崩れ」とを天秤にかけることがある。筆者も現役時代、急な割り込みを避けるべく急ブレーキを踏んだところ、長く薄っぺらい金型が荷崩れを起こし、運転席のわずか数センチのところまで滑ってきたことがある。
さらに、荷崩れに関するドライバーへの影響で言うと、前回記事でも紹介した「弁済」という金銭的な負担も生じる。
あらゆる面で「リスク」や「負担」しかない
運送業界には、コンビニやスーパーなどに届ける段ボールに入った商品などにおいて、たとえ中身の商品は無傷でも、梱包材である段ボールなどにほんの僅かな傷やスレ、黒ずみなどがあるだけでもドライバーが弁償させられるという、労働時間よりも早急に改善すべき悪しき古き商慣習があるのだ。
無論、荷崩れでは当然「荷物そのもの」にも大きな影響を及ぼす。