「禁止」ツイートが逆効果に

「タイド・ポッドの正しい使い道は? もちろん洗濯だ。それ以外の使い道は存在しない。タイド・ポッドを食べる? 絶対にダメ!」

さらにダメ押しが必要だと思ったのか、P&Gはアメリカンフットボールのスター選手ロブ・グロンコウスキー(愛称グロンク)を起用して短い動画を作成した。

「タイド・ポッドは食べても大丈夫ですか?」という文字に続けてグロンクが登場し、カメラに向かって人差し指を振りながら「ノー、ノー、ノー、ノー、ノー」と言う。

しかし残念ながら、これで事態は収拾がつかなくなってしまった。

グロンクの動画が公開されると、洗剤の誤飲で病院に担ぎ込まれる人も急激に増加したのだ。

動画が投稿されてから2週間足らずの間に、パック型洗剤を飲んだり吸い込んだりして病院で治療を受けたケースが2倍になった。さらに数カ月後になると、過去2年分を合わせた数の2倍にまで増加したのだ。

つまり、タイドの対策は完全な逆効果だったということだ。

「警告」が「推薦」の言葉になってしまう

このタイド・ポッド・チャレンジ騒動は特殊な例だと思うかもしれないが、むしろ一般的な現象の一例だと考えたほうがいいだろう。

つまり、禁止は得てして逆効果になるということだ。

たとえば、認定されない証拠は参考にしてはいけないと言われた陪審員は、むしろその証拠に引きずられて判断する。お酒を飲んではいけないと言われた大学生は、かえってお酒が飲みたくなる。そしてタバコは体に悪いと言われ続けると、かえって興味がわき、将来喫煙者になる確率が高くなるのだ。

こういった状況では、警告はむしろ推薦の言葉になる。10代の子供に「あの人とデートしてはいけません」と言えば、その人にますます夢中になるだろう。人は何かを禁止されると、かえってそれがやりたくなることがある。