不快をガマンすることは難しい

〈負の強化〉

「負の強化」とは、「不快を解消するために依存物を使用する」側面です。

依存症になると、依存物を止めると「不快」になります。

この「不快」は「イライラする」、「ムシャクシャする」、「物足りない感じがする」、「空虚な感じがする」、「うつ」、「不安」など様々な形で現れます。

人は「不快」になると何とか早くそれを解消しようとして、思考・視野が狭くなることがよくあります。他の「不快」の解消手段もあるのに、慣れ親しんだ依存物を使って、「手軽」に「不快」を解消したくなります。

一般的に人は、「快楽」がなくなることを我慢するのはさほど困難ではないのですが、「不快」を長期間我慢することは難しいようです。私たちの脳は、快楽の消失は諦められても、不快を我慢し続けることは困難なのです。

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「負の強化」は意思の力が及ばない

「負の強化」による生理的な不快さは、軽度であっても、かなりやっかいなものです。

長期間続く生理的な不快さは、「虫刺されによるかゆみ」にたとえることができます。

夏に肌を露出して外出すると、蚊などの虫に刺されることがありますよね。蚊は我々の血を盗んでいくだけならまだしも、アレルギー反応が出る唾液を置いていきます(さらに病原体も置いていくことがあります)。そして蚊に刺されて薬もつけずにそのまま放置しておくと、その後数日にわたって「かゆみ」という不快さが生じます。

そんな「かゆみ」を我慢できずに衝動的に搔いてしまう――それは、どんなに我慢強く、精神力の強い人であっても、「負の強化」を精神力で我慢し続けることは難しいことの現れでもあります。

意思の力で「負の強化」に抗うのはさほどに難しいことなのです。

「依存物を使用中の依存症の人」は、「依存症ではない人」に比べて、総じて精神状態が悪い傾向にあることが知られています。これはアルコール依存症でもインターネットやゲーム、ギャンブル依存症でも同様です。

しかし、ここで不可解なことが生じます。依存症の人は、依存物を使用するという「快楽」をたくさん得る行為をしているはずなのに、なぜ「不快」になってしまうのでしょう?