快楽を得ても不快になる恐ろしさ

もちろん依存物をたくさん使用することによって、たとえばアルコール依存症の場合、多量飲酒によって肝臓が悪くなる、ギャンブル依存症の場合にはお金がなくなる、人間関係が悪くなる、インターネット依存症やオンラインゲーム依存症の場合は学業成績が不振になるなど、依存症特有の悪影響によって「不快」になる場合もあります。

中山秀紀『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)
中山秀紀『スマホ依存から脳を守る』(朝日新書)

それらの悪影響による「不快」解消のために、さらに依存物を使うこともあるでしょう。しかし世の中には肝臓が悪いことや、お金がないこと、人間関係が悪いこと、学業成績が不振になることをあまり気にしない人もいます。そういう人たちでも、依存症の負の強化によって脳内が「不快」になると、やはりその解消のために依存物から離れがたくなってしまうのです。

要するに、依存症者の場合は、快楽をもたらす依存物を使えば使うほど、その人の不快度は増していきます。

依存症者にとっても、その周囲の人にとっても、依存物による「快楽を得られるけど不快になる」のを体感的に理解しにくいということが、この病の最もやっかいなところかもしれません。こうして依存症という病は重篤化してしまうのです。

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