信じていた姉に億単位の金を盗まれた江利チエミ
芸能界などでは昔から、信用していた人間に多額の金を盗み取られたというケースは枚挙にいとまがないが、中でも、歌手・江利チエミのことを思い出すと今でも胸が詰まる。
デビュー曲『テネシーワルツ』で一躍スターになったチエミは、絶頂期にまだ売れない俳優・高倉健と結婚した。
その彼女を悲劇が襲う。結婚3年目に妊娠したが重度の妊娠中毒症(現在の妊娠高血圧症候群)を発症し、中絶を余儀なくされてしまう。
さらに信用して資産の管理まで任せていた異父姉が、実印を使ってチエミ名義の銀行預金を使い込み、その上、高利貸しから多額の借金をしていて不動産まで抵当に入れていたことが発覚したのである。当時の金で数億円といわれた。
「あなたに迷惑をかけるわけにはいかない」。離婚しようといい出したのはチエミからだったという。
彼女は地方のドサ回りまでして負債を完済した。彼女の唯一の楽しみは、帰ってきて一人で飲む酒だった。だがその酒が、チエミの命を奪ってしまったのだ。享年45。
その心の傷は深く、長く残るに違いない
高倉健は葬儀当日、式場には入らず、車を止めて手を合わせていたという。高倉が生涯で最も愛した女性はチエミだったといわれる。
生前高倉は、彼女の命日には必ず彼女の墓がある法徳寺(高倉の自宅のすぐ近く)にお参りしていた。
大谷も水原氏を信用しすぎて裏切られたのだとしたら、その心の傷は深く、長く残るに違いない。
しかも、野球はメンタルのスポーツである。長嶋茂雄がいうように、打撃の極意は「スーッと来た球をガーンと打つ」だけだ。だが、少しでも邪念が入ればそれができなくなる。
人生最大の難関を、大谷翔平は切り抜けられるのだろうか。
幸い彼には新妻・真美子さんがいる。彼女の内助の功が今ほど必要な時はないはずである。(文中敬称略)