ワクチン懐疑派を支持者に取り込んだ参政党
他にも“集団ストーキング”や“柔軟剤”などの単語も多く見られたという。
「柔軟剤というワードがワクチンとどう関係しているのか不思議に感じられるかもしれませんが、人工物を嫌う“自然派”的な考え方の人たちもワクチン懐疑派になりやすい傾向があるようです。そうした人たちが柔軟剤の弊害について多くツイートしているのでしょう」
ワクチンに対する態度と政治的な相関性についての見地も実に興味深い。
コロナ禍からHighグループだったユーザーは立憲民主党やれいわ新選組、日本共産党などのアカウントをフォローする率が高いのに対して、コロナ禍を経てLowからHighグループに新規に移行したユーザーは上のような既存の政党をフォローする傾向が弱いことが分かった。ところがこのLowからHighに移行したグループは、2022年3月から9月にかけて、参政党のアカウントをフォローする率が急上昇したのだという。
「これは、参議院選挙の影響だと思われます。この時参政党は、反ワクチンの態度を前面に押し出して選挙戦を戦っていたようです。今回の分析の結果、コロナ禍以降に新規にワクチン懐疑的な傾向を持つようになったユーザーは、陰謀論や自然派、スピリチュアルな世界観をきっかけに、ワクチン懐疑的な態度を持ち、さらに反ワクチンを政治信条に掲げた政党への支持を高めた可能性が示唆されていると考えます」
陰謀論を強く打ち出した方針は結果的に成功している
この結果を別の角度から見ると、参政党を支持した一部の人たちは、コロナ禍以前はさほど政治に興味がなかったのかもしれない。しかし、コロナ禍での参政党の政治信条に触れることで、政治に興味を持つことになったということもあるのだろう。参政党への支持はそうした側面もあるように思われる。
「多くの人たちの意見をすくい上げて、政治の現場にフィードバックするのが政党の役割です。実際、参政党は陰謀論で使われるキーワードや、自然派・スピリチュアリティに親和性の高いキーワードを使って政治キャンペーンを展開していました。方法論や主張の是非は別として、新たな支持者を獲得した参政党の方針は、政治活動としては正解だったのだろうと思います」
以上のように、ツイート分析は、大きな集団の思考の変化を時系列で追う有効な手法だった。ところが2023年4️に、ツイッターがX社に吸収合併され、同7月にツイッターがXに変わったことで、情報の収集が困難になっているという。
「ツイッター時代は、研究等の用途でデータを取ることが許可されていたのですが、X社になってからはそれができなくなりました。これまでと同じような研究をしようとすると、年間で日本の平均年収の2倍くらいのお金がかかることになります。うちは小さな研究室なので、とてもそんな資金はありません。こうした研究に興味のある団体や企業との共同研究を募集しているところです」