継続的な反ワクチン派が政治への関心が高い理由

まず、収集した約1億のツイートを、次の3つのカテゴリーに分類した。

①「ワクチン賛成ツイート」
②「ワクチン政策批判ツイート」
③「ワクチン懐疑ツイート」

「そして、③を多くツイートしている場合は、リツイートしているアカウントを特定し、これを“ワクチン懐疑ツイート拡散アカウント”と定義しました。さらに、このアカウントを多くフォローしているユーザーを“ワクチン懐疑派”と定義しました」

これらを分析したところ、ワクチン懐疑傾向の低いアカウントはアニメ、ゲーム、漫画などへの関心が高く、逆にワクチン懐疑傾向の高いアカウントは、相対的に政治への関心が高いことが分かったという。

「ワクチンというものは、病気が悪化してから接種するものではなく、感染症が広がるかもしれない集団に対して、広く接種することで、感染の広がりを食い止めようとするものです。つまり公衆衛生の側面も非常に強い。そうした背景もあり、ワクチン接種政策を“全体のために個人が強制されるもの”と感じる人たちが一部いるのでしょう。ある意味で、全体主義的な考え方への忌避があるからか、リベラル的な政治志向と親和性が高いと言えます」

「アニメ好き=ワクチン賛成派」ではない

しかし、ここでひとつ疑問が残る。なぜ、ワクチン懐疑傾向が低いアカウントは、アニメやゲームや漫画に親和性が高いのだろう。

「そもそも、ツイッターの利用者が全体的にアニメや漫画のファンが多いということが理由のひとつとして挙げられます。つまり、これらの趣味を持つ方々というのはツイッター上では普通の人たちだといえます。ようするに、ツイッターを利用している大多数のアカウントはワクチン懐疑傾向が低いため、ツイッター利用者全体の傾向が表れてしまっただけだと言えます。けっしてアニメが好きだからといって、ワクチン懐疑派にならないわけではありません」

同研究では、ツイッターユーザーのワクチンに対する態度がコロナ禍前と後でどのように変化していったかの検証も行っている。ワクチン懐疑傾向の高い層をHighグループ、逆にワクチン懐疑傾向の低い層をLowグループとした。

「コロナ禍以前からHighグループに属していたユーザーと、コロナ禍を経て2021年12月までにLowグループからHighグループに移行したユーザーの2つを比較分析しました。コロナ禍以前からHighグループだった人たちは、政治的な関心が強く、どちらかというといわゆるリベラルな傾向を示していたのに対し、LowからHighに移行したユーザー、つまりコロナ禍を経てワクチン懐疑派になったユーザーは陰謀論や自然派、スピリチュアリティに関する単語がツイッターのプロフィール文に頻繁に現れることが分かりました。一例を挙げると、“テクノロジー犯罪”や、“波動”などの単語です」