東京都の都庁所在地はあいまいなまま
北海道は、1886年に函館県、札幌県、根室県の3県が廃止され、札幌に北海道庁が置かれた。北海道というのは東海道や山陽道などのアナロジーであり、同時にアイヌ語で「この地に生まれた人」を意味するカイという趣旨もあって名付けられた。
沖縄は、もともとは沖縄本島のことらしい。1872年に「琉球藩」となり、1879年に琉球処分で沖縄県となり、県庁は那覇に置かれた。
東京都では、かつては府庁が東京市麹町区(神田区と合併して千代田区)にあり、都市名が採用されたが、1943年に東京市は廃止された。ちなみに、現在の都庁は新宿区西新宿にあるが、ここは1932年までは豊多摩郡淀橋町だった。
愛媛に「温泉県」は誕生せず
こうして、各都道府県の事情を見てきたが、都道府県庁のある都市名を採用するか、郡名を採用するかにおいては、漢字や語感も関係していそうだ。
たとえば、松山市の郡名が「温泉郡」で軽すぎるとか、高知市が土佐郡で旧国名と同じになってしまうとか、長崎市は彼杵郡で難読だとかいった点が、郡名が避けられた理由でないだろうか。
九州は県名と県庁所在地がすべて一致しているという人もいるが、7県のうち4県(佐賀、大分、宮崎、鹿児島)は都市名も郡名を起源としていることを知らないか、忘れているようだ。いずれにせよ、戊辰戦争の勝ち負けとはなんの関係もないのである。