アンチを回避し、誰かを応援したい心理

調査でZ世代と話していると、彼らの感情の動きが、スーッと波風が立たない穏やかな水面のような状態に感じることがよくあります。無感情で冷たいのとはちょっと違います。感情の起伏が少なく、周囲から見ると本音を捉えるのが非常に難しいのです。

たとえば、広大な太平洋の下にはマリアナ海溝があり、そこには多くの深海生物が生息しています。Z世代も、一見したところはおだやかな水面のように見えますが、その実、内面の深いところではさまざまな喜怒哀楽の感情を秘めています。しかし、それらの感情を爆発させて水面を揺るがし、表出させるほどのエネルギーはありません。

なぜなら、そういった感情を爆発させて、集団の中で目立つ人やリーダーのような人間になると、必ずアンチが発生し、あることないことを言われると知っているからです。自分の中の奥底に、ひっそり隠し持っているのです。

彼らは、出る杭になって打たれることを嫌います。中途半端に爆発させるくらいなら、最初からそういうことを表に出さないほうがよい、という選択をしています。

だからこそ、逆説的ではありますが、内なる熱い感情を秘めて頑張っている人、インフルエンサーのように波風立てることをいとわず頑張っている人を「応援したい」という強い気持ちを抱いているのです。それが、彼らの「一神教」的スタンスへとつながっていくのです。

横並び意識の中で、腹の探り合い

コロナ禍で「自粛警察」や「マスク警察」といった言葉が生まれたように、日本人はもともと同調圧力の強い国民性です。

そして、Z世代にはとくに、ディグラム診断で「ライン型II」「ライン型III」と呼ばれる、横並び意識が強い性格タイプの人が多いという特徴があります。

Z世代に多い「ライン型II」「ライン型III」は、コツコツ慎重な性格タイプ(『「人間関係」は性格と相性が9割』より)

さらに、ディグラム診断でいえば、先に説明した5つの指針のうち、①親の言うことをよく聞く子ども(AC:Adapted Child)という指針の高い人が集まると、いっそう同調圧力が強くなります。

こういったタイプは、みんなぴったり同じように横並びになりながら、腹の中では相手はどう思っているのか探っている状態です。

このような相手に対してコミュニケーションを円滑化するには、④母のような優しさ(NP:Nurturing Parent)で接することが大切です。

具体的には、その人の過去や、その人が以前に話していたことを覚えておき、「そういえば○○さんは、以前××と言っていましたよね」などというように、リマインドをかけると心を開く効果があります。