「空気を読む」は超高難度のコミュニケーション能力
「言わぬが花」というように、日本人は昔から言葉でストレートに表さないことを美徳としていました。自分の気持ちをはっきり言葉で表現しないほうが、コミュニケーションにおいて波風が立たない、というわけです。
しかし、言葉にしないということは、逆に相手の側に「察する」必要が生じてきます。
相手の表情を見て、「じつは、本当はこう思っているのではないか」「この言葉の裏には、こういう意味が含まれているのではないか」と、相手の気持ちや考えを探る必要があるわけです。
そこで求められるのが「空気を読む」能力です。仕事で知り合った人と「今度、飲みに行きませんか」「いいですね、ぜひ行きましょう」という会話があったとき、相手が本当に飲みに行きたいと思っているのか、単なる社交辞令で口にしているのかを適切に判断できないといけません。
この「空気を読む」というのは、1対1の間の空気だけではありません。これが集団になった場合、その場全体の空気を探りながら、自分はどうすればよいのかを判断するという、非常に難易度の高いコミュニケーション能力が必要になります。
コミュニケーションは1対1から無限大へ
そもそも日本人の中には、「空気を読む」という土壌がありました。しかし、インターネットが登場したこの20年で、その傾向と難易度はさらに加速していきました。
コミュニケーションといえば対面が基本。それが150年前に声だけのコミュニケーションである電話が登場し、「声」から空気を読むことが求められ、さらにインターネットによって「文字」だけのコミュニケーションへと移行し、今は「文字」から行間を読んで空気を読まないといけなくなったのです。
さらに、対面であれば、空気を読むといってもせいぜい多くて30人から40人、学校の1クラスや部活の仲間、会社の一部署程度です。
ところがネット上になれば、1対30どころか、1対100人や1000人は当たり前。何気ないつぶやきや、ちょっとした愚痴がバズってしまい、一晩寝て起きたら1万人を相手にしていた、なんてこともあります。