小さな本屋という空間的な制約を突破する方法

まとめてみますと、「個性」の五つのことがらです。

(1)小さな本屋という空間的な制約を突破しようとした。
(2)その手立てのひとつとして「人文書でおともだち」というキャッチフレーズを掲げながら「ミニコミをつくるような気持ちで本屋をつくってきた」ことにある。
(3)本屋をミニコミに見立て、お客と書店という関係を超える「物語」を一緒につくっていこうと考えた。
(4)物理的に限界のある書店という空間を、ミニコミ的場として解放することで空間的な制約を突破しようとした。
(5)いや、実際に紙のミニコミ誌をお客とともに作り、店頭で配ってきた。「人文書でおともだち」というのは、イメージ戦略的なキャッチコピーではなく、実態としてまったくその通りのものだった。

このとりまとめも「メッセージ性」の中身を紹介するものだと思います。こんなふうに理解してくださっていたことに驚いています。

地方の町でも書店が文化の拠点になる

その三

これは岩田直樹さんに教えてもらい後追いの「聴き逃し」で聞いたのですが、閉店について荻窪の「本屋Title」のご主人辻山良雄さんが「ラジオ深夜便」で5月21日に紹介してくださっていました。

全国放送で、定有堂を全く知らない人たちを含めて幅広く閉店を告知してくださったので「記憶」という面では大きなとりまとめかと思いました。少し長くなりますが、ご紹介したいと思います。

《陳列方法などだけではなく、人口が少ない地方の町でも、書店がその町の中で、文化の拠点になりうることを証明した店だと思います。例えば、いま全国の多くの書店で行われているような読書会や、店内で発行しているフリーペーパーという活動も、長年続けていらっしゃいました。

「この店に来れば何か知的なものに触れることができる」ということを感じていた人も、近所には多かったのではないでしょうか。

奈良さんは、「本のビオトープ」という言葉をよくインタビューで語ったり、文章に書かれてこられました。ビオトープとは多種多様なものたちが、その中で生息できるような空間のこと。本は一冊一冊すべてその内容は異なりますが、それぞれの本を書く人、それに携わった人の思いを含みながら、書店という空間の中であたらしい芽をはぐくんでいこうという土壌づくりを、わたしはこの言葉から感じました。》