PayPay全額返金キャンペーンの勝算

2018年末頃から、PayPayというスマホ決済サービスが普及しました。「10回、20回、40回に1回全額返金される」という期間限定キャンペーンが話題を呼びました。

なぜ、全額返金という一見太っ腹なキャンペーンを打ち出せるか、赤字になったりしないのかというと、大数の法則に裏打ちされた戦略があるからです。

例えば1万円の買い物の場合、「40回に1回全額返金」にしたときの還元率は2.5%です(1万円×1/40+0円×39/40=250円)。

このキャンペーンに1人しか参加せず、運よくその人が1万円全額返金されることもあるでしょう。しかし、実際はかなり多数の人がこのキャンペーンに参加していました。購入金額も様々です。

キャンペーン全体を見たとき、購入総額の2.5%が還元されるところに落ち着くのです。

PayPayは「初期導入費・決済手数料・入金手数料0円」をウリに加盟店を拡大してきましたが、利用者が多くいることによって大数の法則が働き、コストの計算をより正確にすることができるのです。

この大数の法則に則って経営をしているのがギャンブル店です。

顧客がプレイする回数(試行回数)を多くすることで、設定した控除率(店側の取り分)に収束しやすいようにコントロールしているというわけです。

つまり、お客さんがプレイすればするほど(試行回数が増えるほど)店側の儲けが確定しやすいのですが、お客さんのプレイ数が少ない(試行回数が少ない)と、設定した控除率に収束しづらくなる(店側が赤字になることもあり得る)ということです。

こういった理由から、ギャンブル店では顧客のプレイ回数(試行回数)を、経営の最重要指標として設定しています。

例えばパチンコ店では、「稼働数」といい「お客さんが一日を通してパチンコ台に打ち込んだ玉の数=試行回数」という指標を、一番重要な指標として扱っているのです(「売上」や「客単価」ではないところがポイントです)。

写真=iStock.com/Travel Wild
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自動車保険は加入者をどれだけ増やすか

大数の法則はギャンブルの世界だけでなく、保険や銀行の貸付等にも幅広く応用されています。

自動車保険を例に考えてみましょう。万一の事故に備えて、加入するのが自動車保険です。

しかし、自動車事故が頻繁に起きたら、保険会社の保障は大変なことになります。

でも、実際にそうはならないのは、「事故を起こす人」が加入者全体の比率でいえばかなりの少数だからです。その他大勢の「事故を起こさない人」が払っている保険料で、「事故を起こす人」の保障をまかなっているということです。

保険の場合も、加入者をどれだけ増やすかということが大事です。

加入者が多くなるほど、加入者全体の事故を起こす確率にブレがなくなり、安定した経営ができるようになります。

保険料が人によって異なるのは、加入者の年齢や性別、免許証の色などで事故を起こす確率の高低が異なるためです。「事故を起こす確率の高い人」と判断された場合には、保険料が高くなります。

銀行の貸付金利もこれと同等の仕組みです。返済するのが難しそうな人ほど金利が高くなったり、そもそも審査に落ちてしまって借りられなかったり、ということがあるのはそのためです。