いじめの事実を認めない歌劇団と阪急阪神HD

宝塚歌劇団の昨年10月以降の休演回数の急増は、パワハラ問題への対応の不備によるものです。

今年1月24日の遺族側と宝塚歌劇団との第3回交渉でようやく一部のパワハラ行為について認めたものの、それまでは宝塚歌劇団が依頼した法律事務所による調査報告書を根拠に、いじめやパワハラの事実を認めていませんでした。調査報告書への疑問点や宝塚歌劇団や阪急阪神HDの対応の問題点については、以下の記事で指摘しました。

<参考記事>
なぜ宝塚歌劇団は「いじめ疑惑」に正面から向き合わないのか…阪急阪神HDに共通する「冷徹さ」という大問題
宝塚歌劇団の「清く正しく美しく」はどこで狂ったのか…「女の軍隊」で陰湿いじめが繰り返される根本原因

最初のボタンの掛け違いは、Aさんの訃報についての阪急阪神HD・角和夫会長の対応でした。阪急電鉄役員のゴルフ会に参加し、一報を聞いた後も、角会長はゴルフを続行。10月8日からは、角会長は夫人とともにヨーロッパに旅立っています。

「伝統を口実に隠蔽へと走っている」

角会長の実兄で、弁護士でもある角源三氏は『週刊新潮』(2023年12月21日号)で、次のように指摘しています。

「和夫はまずパワハラを認め、ご遺族に謝罪して辞任すべきなのに、いずれも実行していない。人間性というのは極端な状況でこそあらわになりますが、彼は逃げるタイプの人間。高校時代も勉強から逃げてエレキにはまっていたし、ちっとも変わっていません。元はといえば、そんな人間をトップに据えた阪急がおかしい。宝塚の生徒さんらを単なる金儲けの手段と見なし、人としての権利を認めていない。それで伝統を口実に隠蔽いんぺいへと走っているのです」

角会長の初動とパワハラへの対応が違ったものであれば、宝塚歌劇団側と遺族側の話し合いも早期に解決していたはずです。宝塚大劇場や東京宝塚劇場での各組の公演中止を決定したのは昨年12月。「31億円超の損失」は宝塚歌劇団や阪急阪神HDの経営判断のミスと言えます。ボタンの掛け違いが騒動を大きくし、遺族を傷つけ、阪急阪神HDの利益を奪いました。今後、株主からの突き上げが予想されます。