宝塚歌劇110周年を大々的に盛り上げる予定が…

阪急阪神HDのグループ経営企画室によると、客席数2550席の宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)の下半期(2023年10月~2024年3月)の休演は106公演、客席数2069席の東京宝塚劇場(東京・日比谷)の休演は60公演の見込みです。

さらに今年4月に宝塚大劇場で予定していた宝塚歌劇110周年の記念式典、10月に大阪城ホールで開催予定だった10年に一度の「大運動会」も中止になりました。

2020年から猛威を振るったコロナ禍の影響で、2021年3月期のステージ事業(宝塚歌劇団関連)の営業利益は17億円に落ち込みました。その後、69億円、68億円と回復し、当初は70億円の予想。そして来期、110周年を機に、さらに宝塚歌劇を盛り上げる予定でしたが、それが泡と消えました。今年4月以降も休演が続けば、来期も想定した利益を大幅に下回る可能性があります。

宝塚歌劇団は国内のミュージカル市場を牽引してきた存在ですが、その展望は明るいものとは言えません。市場動向に詳しいぴあ総合研究所の笹井裕子取締役所長によると、コロナ禍の影響が大きかった2020年に、ミュージカル市場は前年の4分の1に縮小。その後、順調に回復し、ステージ市場全体の売り上げ規模1705億円のうち、643億円を占めています(2022年)。

【図表1】ライブ・エンターテインメント市場の推移
【図表2】ステージ市場の構成比率

しかし、今後の動向について笹井氏は次のように話しています。

「シェアの高い劇団四季と宝塚歌劇のミュージカルが回復を牽引し、それに次ぐシェアの東宝ミュージカルも健闘しています。2.5次元ミュージカルもひと足早く回復しました。劇団四季はレパートリー作品に加え新作の『アナと雪の女王』や『バケモノの子』もロングランヒットをしており、スターに依存しない公演体制のため、主演の体調が悪くても、代役で公演を打てます。

その点、宝塚歌劇はスター制を採用していることもあり、出演者等のコロナウイルス感染による休演が多くなる傾向がありました。今後のミュージカルの動向については、帝国劇場(客席数1897席)が来年2月から建て替えのため休館することもあり、劇場の確保が難しく公演できないという従来から抱えている会場不足問題が深刻化します。

観客の固定化・高齢化が進んでおり国内の人口が減ることもマイナス要素で、今後、現状の延長線上ではミュージカル市場の大きな伸びは期待できないでしょう」