特定層含有率に現れる特徴

視聴率の絶対値以外に特定層の含有率を分析すると、ドラマの特徴はより際立つ。各特定層の視聴率を個人全体で割った数字である。

まず「女性20~40代・結婚願望あり」層で見ると、娘の結婚がテーマの1つになっている「春になったら」の含有率が一番高い。新たな家族を作る際の、父娘だけだった家族の問題は重みを持つことがわかる。

スイッチメディア「TVAL」データから筆者作成

「子と同居する40~50代」層では、男女で対照的となった。父たちの“父娘ドラマ”への関心はあまり高くないようだが、母たちは大いに注目した。中でも「春になったら」は、父78%と平均より低いが母は126%と平均を大きく上回った。父が娘の結婚をどう見るか、娘が父の死をどう捉えるのか、女性たちには大きな意味を持ったようだ。

40~50代の単身者では、男女の差はより大きくなった。男性では“父娘ドラマ”を避ける人が明らかに多いが、中でも娘の結婚や父の死が前面に出た物語を敬遠した。そもそもファミリードラマがNGなようだ。

ところが女性にはそんな抵抗感が微塵もない。「春になったら」ですら平均の1.6倍で、「不適切にもほどがある」に至っては2倍超。すべての層の中で断トツの視聴率となった。同層には多くのことに関心を持つ活動的な人が多いのかもしれない。

職位による差の意味するもの

管理職・非管理職・非正規職員における差も興味深い。まず男性40~65歳では、「さよならマエストロ」の含有率が圧倒的となった。特に管理職が断トツだが、「音楽に没頭して家族を顧みなかった父親が親子の絆と人生を再生させる」物語という触れ込みは、仕事に邁進して得た高い地位の男たちにとって、どこか思い当たる部分があるのだろう。大いに気になっている様子はSNSのつぶやきにも表れている。

「父と娘に何があったのか」
「夏目の根本にあるのは家族を顧みなかった後悔なのかもしれない」
「はたして家族はもとの形を取り戻すことができるのか」

地位の高い男と異なり、中高年でも非正規職員や女性20~30代の非管理職や非正規職員では、「不適切にもほどがある」の比率が高くなっている。特に女性非管理職や非正規職員では「さよならマエストロ」の1.2倍ほどの含有率となったのは興味深い。

「100%で仕事してたウチの父、死ぬまでマジでずっとこの阿部サダヲ状態だった」
「昭和のおやじあるあるすぎ」
「30年前の日本は週6勤務でセクハラやパワハラが当たり前の時代」

令和になっても、男社会の残滓は至る所に残っている。立場の弱い人々は、その理不尽で痛い目に遭った経験があるのだろう。昭和と令和のギャップが次々に出てくる展開に、思うところが少なくない人が注目していると思われる。