職種別の差から垣間見えるもの
職位の差以外に、職種別での差も注目に値する。まず事務職・技術職などでは特徴が出なかったが、「営業職」や「宿泊飲食業界」で働く人たちは“父娘ドラマ”のいずれも平均以上の含有率となった。多くの人にとっても“自分事”であり、話題になりやすいためにチェックしているようだ。
中でも宿泊飲食業界で働く人では、「春になったら」が最多となった。
「自分事として見るべき視点がたくさんある」
「生と死を考える深くもほっこりする今までにない素敵なドラマ」
親の死や娘の結婚など、一般のお客と話を合わせるには格好のドラマとなっているようだ。一方「営業職」では、「不適切にもほどがある」の比率が最大となった。企業や組織で働く人々と接することの多い同業種では、コンプラやハラスメントなどがより“自分事”で、取引相手との話題にもなりやすいのだろう。
「職場で流行ってる(中略)自分達の昔話に飛んだり、めっちゃ楽しい」
「お客さんと営業中盛りあがってた」
「(昭和と令和の)違いやそれぞれの異常さがよくわかって面白い」
同ドラマの含有率が断トツとなった職業は公務員だった。価値観やルールの変化に最も敏感とならざるを得ないのが公的な立場の人々だからだろうか。また「春になったら」が極端に低くもなっていたが、どうやら“父娘”などファミリードラマの要素より、昭和と令和の落差など社会性に公務員はより引っ張られているようだ。
回を追う中での変化
最後に3ドラマを回を追う中での変化と特定層の関係に触れておきたい。まず比率が高まっているのは、「不適切にもほどがある」の中年男性と「管理職」層、そして「ドラマ好きの40~50代男性」だ。やはり時代の変化にさすがにオジサンたちが気づき始めているのだろう。特に地位の高いオジサンや、アンテナを高く上げている人々には欠かせない物語になり始めている。
逆に比率を下げているのは「春になったら」の「公務員」や「男性40~65歳営業職」。仕事の上では“自分事”ではなくなっているようだが、それでも中高年の女性では高い支持を保っている。仕事ではなく私生活上で大切な話となっていることがわかる。
変化があまりないのが「さよならマエストロ」。そもそも視聴率全体も安定しているが、どの層の比率も変化していない。仕事と私生活の問題をバランス良く織り込み、各登場人物の課題も次々に登場し、あらゆる視聴者を飽きさせずにうまく見せているかがわかる。さすが安定の日曜劇場だ。ただし“父娘に何があったのか”は明かされずに7話まで引っ張ってきている。その展開次第では落胆させる人も出かねないだけに、今後は責任重大だ。
さて3ドラマはいよいよ終盤に入っていく。着地をどう魅せるのか、各物語に手腕に大いに期待したい。