「炭水化物抜き」、「脂質抜き」はNG

「あれを食べなくちゃいけない」「これを食べてはいけない」などと難しく考えず、好きなものを好きなように食べればいい、がゆるく考える健康の基本です。

けれども、もちろんなるべくいろいろな種類のものを食べるほうがいいですし、年をとればとるほど、タンパク質を摂ったほうがいいのは間違いありません。タンパク質が不足すると、肌も汚くなるし、髪の毛も抜けやすくなり、内臓の状態も悪くなります。

年齢とともにあっさりしたものが欲しくなる人もいますが、食べる全体量が減るからこそ内容は大切です。もはや、「炭水化物抜き」や「脂質抜き」など特定の栄養素を減らすダイエットは厳禁です。

60歳からは、できればなんでも食べる雑食でいたほうが元気です。できるだけ肉などのタンパク質を摂る、コレステロールはむしろ高めのほうがいいというのが年をとってからの基本です。

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年齢とともに食べられなくなってきて、どうしても痩せてしまうという人もいますが、頑張って食べるしかありません。食べないでいると元気がどんどん衰えてしまうので、食べる量が少ない人ほどタンパク質を重点的に摂るようにすべきです。

食べることは、本当に元気の基本だと実感します。90代の人などを見ていると、ご家族が「最近食べなくなった」とか「痩せてきた」というときは、たいてい数カ月くらいで寿命を迎えることが多いのです。とはいえその人たちは、それまでしっかり食べてきたからこその長寿です。食べることは、健康の大きなバロメーターと言えます。

健康と寿命のためになるのは医学よりも栄養学

医学より栄養学のほうがはるかに健康に寄与するというのが私の持論です。日本人が体格がよくなったのも、寿命が延びたのも、すべて十分なタンパク質を摂るようになったからです。

かつて日本人の死因の第1位を長らく占め、不治の病としてあれほど恐れられた結核でさえもはやかかる人がほぼいなくなったのも、タンパク質を摂るようになって免疫力が上がったからだと私は考えています。

1951年、結核に代わって死因のトップに躍り出たのが「脳血管疾患」です。昭和30年代から40年代頃は、最高血圧が150、160の人が脳出血で倒れることが多かったのです。

けれども、今では出血型の脳卒中は大幅に減って、代わりに脳梗塞が脳出血のおよそ2倍になりました。脳出血になる人も血圧が高いせいである以上に、タンパク質不足で血管が破れやすいという理由です。

さらに日本人がタンパク質を積極的に摂るようになって、脳血管疾患がだんだん減少、1981年に代わりに死因のトップに躍り出たのが悪性新生物、つまりガンです。脳血管疾患はどんどん勢いをなくし、今では死因の4位にまで落ち込んでしまいました。

日本人の死因が移り変わってきたのは、栄養状態がよくなったことが最大の原因です。つまり、栄養学のほうが医学よりはるかに長寿の源になっているのです。

100歳を超えてお元気な高齢者は、本当にいろいろなものをよく食べています。できるだけ食欲旺盛でいましょう。