2000年代から発掘されてきた「駅ナカ」需要

筆者も実際に、このポップアップストアに足を運んでみた。平日の午後にもかかわらず、多くの人が立ち寄り、商品を購入していた。駅構内ということもあり、移動途中にたまたま立ち寄る人も多いようだ。

スタッフに聞くと、一番の売れ筋は「(販売している約120品のうち)地元ソウルフードで定番おやつの『ビーバー』(揚げあられ)ですね」という。他にも、「焼芋きんつば」「のどぐろチップス」「献上加賀棒茶」「ゴーゴーカレー監修 カレーさきいか」「元気の源 ゴーゴーカレーによく合うビール」などを購入する客が多かった。

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地元ソウルフードで定番おやつの「ビーバー」
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「元気の源 ゴーゴーカレーによく合うビール」
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「のどぐろチップス」
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「献上加賀棒茶」

こうした、駅の中にある商業施設は「駅ナカ」と呼ばれ、各鉄道会社が力を入れる事業の一つである。代表的なものが、JR東日本の「ecute」だろう。2024年現在では15の駅にも及び、さまざまな駅で開発が進められている。

「駅ナカ」は2000年代からその展開が始まり、2007年には経済産業省が商業統計で「駅そのものの集客力が注目され、コンビニエンスストア、書店をはじめ様々な業態の事業所が改札内に進出し、近年では、駅の改修を含めた商業施設の開発を行っているケースもある」と書いている。注目すべき商業形態として明示されているのだ。現在ではすっかりおなじみの存在となった。

こうした「駅ナカ」事業を支えているのは、その収益率の高さである。nikkei4969の調べによれば、2007年の段階において、1平方メートルあたりの年間売上高は、小売業全体で66万円に対して、駅ナカでは513万円となっており、駅の中での事業展開が格段に優位であることがわかるだろう。

国土交通省「鉄道輸送調査」によれば、コロナ禍を経て、鉄道を利用する人々はコロナ前の80%ほどになっており、こうした「駅ナカ」事業も岐路に立たされていることに間違いはない。

一方で、駅ビル事業も含め、各社こうした駅での商業活動には積極的であり、その数は増え続けている。2000年代からの「駅ナカ」需要は依然として高いのだろう。