限界分譲地の所有者の典型的な誤解としてよく見られるのが、固定資産税の算出の目安として市町村ごとに算出される「固定資産税評価額」が、そのまま市場価格として通用するとの思い込みである。

現実にはもはや価格も付けられないような無価値な不動産であるにもかかわらず、数十万円の評価額を根拠に、その価格で売却が可能と早合点し、不動産会社の査定額に不満を述べる売主は少なくない。

1970年代に開発された分譲地の購入者は近年続々と鬼籍に入り、相続が発生している。相続で取得した所有者は、分譲当初と現在の価格差に未練を持っているわけではないのだが、限界分譲地に関する正確な情報を持ち合わせていないために、「原野商法の二次被害」は、相続人も被害に遭うケースがある。

いずれにせよ購入者本人であろうと、相続人であろうと、自分の土地が直面している事態を理解していないと、土地の処分の方法にたどり着けないどころか、悪徳業者の餌食になりかねないのだ。もはや多くの限界分譲地の空き地は、通常の不動産仲介で手放せる代物ではなくなっている。

筆者撮影
詐欺加害者が悪なのは当然としても、根本的に土地に関する正確な情報を持たない限り、処分の道筋は立てようがない。

詐欺の舞台になった分譲地は、原野に還りつつある

さて話を戻すと、前述の「野村ハウジング」による一連の事件では、首謀者らが被害者に高額で売りつけた土地自体、別の被害者を騙して巻き上げたものであるとのことだが、この茂原市弓渡の30万円の売地に関しては、詐欺の道具として利用する目的で安価で取得したうえで、のちに都内在住の男性を騙して高額で売りつけたものと思われる。そしてその売買登記が、抹消請求訴訟の結果無効となり抹消に至ったという事であろう。

この裁判の詳細を知ろうと、仕事上でお付き合いのある弁護士の方に当該事件についての調査をお願いしたのだが、残念ながら事件番号が特定できず、裁判記録の特定ができなかった。