しかしこの茂原市弓渡の分譲地に関しては、地面師は言うに及ばず、ほとんどの人がタダでも欲しがらない無価値の放棄分譲地であり、法を犯してまで無理に取得するメリットがまったくない。むしろババ抜きのババの如く、互いに所有権を押し付け合ってもおかしくないものだ。
おまけに「野村ハウジング」という社名自体、大手不動産業者のそれに似せた、見るからに怪しい社名である。筆者の経験上、大手事業者を連想させるような社名を冠しながら、千葉の片田舎の限界分譲地を扱うような不動産会社にろくな所はないと断言できる。
何もない分譲地が詐欺の舞台になった
いったいこの土地を舞台に何が起きたのかと、まずは「野村ハウジング」という社名をインターネットで検索してみる。すると、すかさずサジェスト機能で「野村ハウジング 原野商法 逮捕」だの「野村ハウジング 犯人」だのと表示される始末で、労せずとも即座に解答が出てしまった。
「野村ハウジング」に関する一連の事件とは何か。資産価値の低い分譲地や山林の所有者に、土地が高く売却できると話を持ち掛けて金をだまし取る詐欺事件である。実際には売却できるどころか、別の土地を高値で売りつけたり、無用な測量費用を巻き上げたりする典型的な手口だ。
例えば千葉県警は2018年7月、栃木県那須塩原市などに山林を所有する首都圏在住の70~80代の男性6人に虚偽の取引を持ち掛け、計約8700万円をだまし取ったとして、千葉県警は組織犯罪処罰法違反などの容疑で男女7人を逮捕・送検したと発表した。(2018年7月18日付東京新聞朝刊・千葉房総版)。
警視庁は2018年11月、20~30代の男13人を詐欺容疑で逮捕している。男らは2016~2018年、栃木県那須町などに土地を所有する千葉県や都内在住の60~90代の男女4人に、太陽光発電事業のために土地を買い取るなどとうその買収話を持ち掛け、計470万円を騙し取った疑いがあるという(2018年11月28日付朝日新聞夕刊、29日付東京新聞朝刊)。