しかし現在、この弓渡の分譲地は、野村ハウジングが騙して行ったであろう売買登記が無効となったおかげで、土地の所有権は被害者から、再度野村ハウジングの名義に戻されてしまっている。見方を変えれば、司法の手で所有者不明土地を発生させてしまったとも言える。

もちろん野村ハウジングは摘発後解散しており、詐欺の舞台となったこの土地は今は誰も管理することもなく、正真正銘の「原野」へ静かに還りつつある。

知人A氏は別の分譲地を購入したが…

なお、冒頭で述べた、この茂原市弓渡の土地について購入を検討していたA氏は、結局その後同じ九十九里平野の別の分譲地を購入し、予定通りセルフビルドで自宅を建築して今も暮らしている。新しく購入したその分譲地にも電柱はなかったが、電柱設置の申請を行って1年後、ようやく設置工事が行われている。

『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)
『限界分譲地 繰り返される野放図な商法と開発秘話』(朝日新書)

投機目的でほとんど詳細な検討も加えず購入されていた70~80年代と異なり、今日あえて限界分譲地の土地を購入する人は、A氏のように明確な利用目的を持っているのが普通である。そうでなければ買う理由がない。そんな買い手は当然購入前に複数の物件を比較し、現地の下調べを行うのが常である。そんな数少ない買い手に対し、土地を手放したい売り手の数は膨大であり、圧倒的な供給過多の状態にある。

だからこそ、条件の悪い土地というものは、場合によっては売値を0円にしなければ引き取り手も決まらないほどなのだが、土地バブルの記憶が今もある当初の購入者や、千葉の不動産事情などほとんど関心もないのに相続してしまった相続人は、そんな供給過多の市場についての知識がなく、業者につけ入られる隙を与えてしまっている。

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