「批判合戦」は真相究明を遅らせる

これまで現状での情報開示のリスクについて語ってきたが、決して「小学館と日本テレビは説明責任を果たさなくても良い」ということではない。

一般に、企業の不祥事が起きた時に、下記のような責任を果たすことが求められる。

1.被害者に謝罪と補償を行う
2.(不祥事の)原因究明を行う
3.再発防止策を立てる
4.関係各所への情報開示と説明を行う(対外的な発信も含む)
5.不祥事の責任を取る

今回の件での小学館、日本テレビが果たすべき責任も例外ではない。企業の沈黙によって、一番立場の弱い個人が矢面に立たされてしまうことは、それこそ「故人の遺志にそぐわない」ということになってしまうだろう。下手をすると、同じ過ちを繰り返してしまうことにもなりかねない。

一方で、今回の件においては、多くの関係者がおり、かつその多くの人が攻撃に晒されているという複雑な状況にあることも忘れてはならない。

写真=iStock.com/OKADA
※写真はイメージです

筆者は、前回の記事(なにが漫画家・芦原妃名子さんを追い込んだのか…SNSで拡散した「原作者擁護、脚本家批判」という善意の地獄)でSNSやメディアでの攻撃によって「真相が解明されるどころか、むしろ闇に葬り去られてしまうこともある」と書いたが、まさにそれが起こりつつあるようにも思える。

人ひとりが死に追い込まれている状況で、この事件が曖昧なままに葬り去られてしまうことは何としても避けなければならないし、今後、同様のことが起きないように、関係各所は最大限の努力を払う必要がある。

日テレ、小学館は適切なタイミングで情報開示すべき

小学館、日本テレビともに現時点で対外発信できる情報は限定的かもしれないが、「今後何らかの対応を取る」といった表明はできるはずだ。企業としての意思表明をしっかりと行い、上記で述べたような一連の対応を行い、企業としての責任を果たすことは可能であるし、必要なことでもある。

なお、上記の不祥事への対応プロセスは、日本テレビと小学館のそれぞれが個別に行うだけでは不十分であるし、そうしたところで問題は決して収束には向かわないだろう。

芦原さんはすでに亡くなられており、取り返しがつかない。しかし、芦原さんの名誉を守り、そして遺族、および近親者の方々に対して誠実に向き合い、寄り添うことを最優先に考えること。そして、上記の5つの各過程において、誰にどのような影響が及ぶのかを考えながら、適切タイミングで適切な情報を開示していけばよいだろう。

情報開示をすること自体が重要なのではなく、最適な対応策を検討し、それを実行する過程で必要に応じて情報開示を行うということが重要なのだ。

最後に、前の記事で述べたことともつながるが、批判をしようとしている人は、その前に、せめてそれがどのような結果をもたらすのか――について考えていただきたいと思う。

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