芦原さんの名誉を守ることが第一優先

短期的には、両社が優先すべきことは下記である。

1.芦原さんの名誉を守ること
2.遺族、および芦原さんの近親者と誠実に向き合うこと
3.当該案件で関係していた人たちを守ること
4.ビジネスパートナー(企業のみではなく、個人も含めて)を守ること

企業というのは、組織、および組織の構成員(社員)を守ることを優先しがちだが、このたび最も犠牲になっているのは、漫画家などの(組織に属さない)個人である。短期的にも、長期的にも彼らと真剣に向き合わなければ、この問題の根本的な解決には至らないだろう。

現状においては、対外的に情報発信をしてもしなくても、誰かを傷つけざるを得ない状況にある。情報発信することで(あるいはしないことで)誰にどのような影響を与えるのかについて慎重に検討した上で、どうするか判断をする必要がある。

記者会見でマイクで説明しようとしているビジネスパーソン
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

「情報開示をすればよい」というものではない

忘れてはならないのは、小学館の「発信する予定はない」という説明はあくまでも社内で行われたものがリークされたもので、小学館が対外的に公表したものではないということだ。各所の反響を受けて、小学館側からなんらかの情報発信がされることは十分想定できる。

現状では、小学館に対して、一般人だけでなく、漫画家や脚本家からも情報開示を求める声が出ている。特に、漫画家からの声が非常に強い。

たしかに、情報開示がなされることで疑念が晴れる可能性はあるのだが、その一方で、問題が深刻化してしまう懸念もあることは忘れてはならない。

1.作品(特にドラマ)の関係者が叩かれる可能性がある
2.テレビ局との関係悪化により、他の漫画家にも悪影響をもたらす可能性がある

小学館側が対外発信をしない理由として「故人の遺志にそぐわない」と説明していると報道されているが、これも批判を浴びている。しかし、筆者はこの説明には一理あると考える。小学館が情報開示を行ったとしても、それは「小学館の見解を表明した」ということであって、全容解明になるとは限らない(むしろそうならない可能性の方が高い)。