平和国家である日本ならではの最適解

つまり、庁法25条が存在しているがゆえに海上保安庁は軍事活動を禁じられているわけではなく、仮に庁法25条を削除したところで、海上保安庁の法的性格が変わる(法執行機関ではなくなる)わけでもないのです。庁法25条の存否のみを問う類の議論はナンセンスだと思います。

もちろん、領海警備を軍事機関が行うべきか、法執行機関が行うべきかという政策的な議論自体は国家の安全保障のあり方を左右する大変重要なものです。それを議論することに意味がないと言っているわけではありません。実際、「領海警備は国家の主権を守るものなので、法執行機関が行うのは適当ではない。軍事機関が行うべきだ」という主張もありますし、軍隊が領海警備の任務を担っている国もあります。

奥島高弘『知られざる海上保安庁 安全保障最前線』(ワニブックス)

しかし、そうした国と同じようなやり方で、海上保安庁を軍事機関化して領海警備をすることが日本に適しているのか、国益にかなうのか、と言われると、私は疑問に思います。

日本は、国家間の紛争解決の手段として戦争を放棄している平和国家です。

また、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現を主導的に推し進めている国でもあります。

そんな日本の立場からしても、軍事機関ではない法執行機関が領海警備を行うことは最も適した対応であり、非常に大きなメリットがあると私は考えています。

関連記事
元海自特殊部隊員が語る「中国が尖閣諸島に手を出せない理由」
リニアを「遊園地の電車」と勘違いしている…東京-山梨の「部分開業」を持ち出す川勝知事の不見識
メディアはスルーしたが…皇室研究家が宮内庁長官発言から読み取った「皇室からのメッセージ」
「立候補するために2億円払った」と吐露する議員も…パーティー券問題だけではない"自民党が抱える闇"の深さ
だから自民党は旧統一教会に依存した…旧統一教会のフィクサーが語る「地方選挙での私たちの活躍ぶり」