不正が行われてもペナルティ、罰則規定がない

これらのデータを見ると、新生した日展がスタートした2014年以降、抜本的な改革が行われていないようです。

その要因の1つに、政府の対応が関係しているとの見方があります。旧民主党(当時)の長妻昭衆議院議員が2014年3月に、安倍晋三総理大臣(当時)と衆議院議長宛に「公益社団法人日展が主催する展覧会において、入選の審査に際し、不正が明らかとなった場合には、不正審査の指示を出した者はどのような処分を受けるのか。政府の認識についても併せてお示し願いたい」とする質問主意書を提出しました。

しかし、政府側の答弁は、不正審査問題の処分は日展に任せ、必要な調査と報告を求める、という対応に留まっています。

また、審査不正疑惑を調査した日展第三者委員会は、2013年12月にまとめた報告書で書道界の問題を以下のように分析しています。

現行規則においても、審査員以外の者は、審査に介入してはならないことが規定されている。規則どおりに行われるのであれば、今回のような問題は発生しなかった。

しかしながら、介入が判明した場合等違反や不正が判明したとしてもペナルティがなければ、規定が有効に機能するとは言い難い。

実効性確保手段は難しい問題であるが、例えば、違反した場合には、一定期間審査員資格を失うといった案など審査の透明化・公正確保を進め日展再生への道を追求すべきである。

このような提言を受けながらも、2015年5月に決議した「日展審査員行動基準(ガイドライン)」には、反映されていません。「日展規則」にも、鑑査や審査で不正をすれば、審査員を解任するなど、ペナルティが書かれていません。日展第三者委員会の提言を無視してきたのです。

「会派の弊害を除去しないと日展の将来はない」

日展第三者委員会の報告書では、次のような警鐘も鳴らしています。

書においては、会派に関する構造的な問題がある。書が、会派を前提としないでは成り立ち得ないのであれば、会派の存在を前提として、その弊害を除去し社会から疑念を抱かれないような措置を講じない限り日展の将来はない。

そのためには、これまでの審査や組織の運営についての仕組みおよび慣行につき、会員その他関係者(これには日展出品者を含む)がその認識を再検討し、意識改革を行って、改めるべきところを改める勇気と実行力を持つ必要がある。今回の出来事をやり過ごせる一過性の災難としてではなく、日展の輝かしい未来のための変革を図るための絶好のチャンスと捉えるべきである。

日展第三者委員会の報告書は、A4判で36ページにも及ぶもので、現状の分析、苦言、提言が盛り込まれていますが、日展は喉元過ぎればやり過ごせるという、一過性の受難と捉え、変革に本気で取り組んでいないのでしょうか。