美術界で最高峰の公募展覧会が「日展」

日本で最も権威のある公募美術展で、百十余年の歴史を持つ公益社団法人日展(日本美術展覧会)が現在、名古屋市の愛知県美術館ギャラリーで開催されています(1月24日~2月12日)。

日本画、洋画、彫刻、工芸美術、書の5部門を擁する、世界でも例を見ない公募展で、“最高レベル”の作家の新作が展示されています。

毎年10月に作品公募を行い、入選者、特選受賞者の作品と日展会員などの作品が、11月から日本各地の会場で披露されます。

2023年開催の第10回日展の展示は、すでに東京・六本木の国立新美術館と京都市の京セラ美術館での公開が終わり、2024年1月から6月にかけて、名古屋市、兵庫県神戸市、石川県金沢市の会場を巡回する予定です。東京では約3000点が展示され、入場料は1400円でした。

書道の筆
写真=iStock.com/hichako
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芸術家は1万2000円を払って挑戦し続けている

「日展に出品して、入選したい」

こうした希望を持つ画家、彫刻家、作家、書家は数多くいます。落選しても心を切り替え、チャレンジし続けるほど、日展が運営する展覧会は権威があります。しかし、入選するのにウラがあり、「あなたのやり方では入選できませんよ」と、業界通にささやかれたらショックでしょう。

ウラ事情を知らないで、毎年、1万2000円の出品料を支払って、渾身こんしんの力を込めて挑戦し続けているとしたら、その芸術家は気の毒としか言いようがありません。こうした事情をマスコミも報道していません。

冒頭で、「百十余年の歴史を持つ日展」と書いたのに、2023年に行われた日展が第10回と記していることに、疑問を持った読者もいるでしょう。まさに、この点が日展の闇の部分を解く鍵となります。

日展は11年前の2013年10月、大激震に見舞われました。朝日新聞が日展の「書」の審査で不正が行われていたと報じたのです。

その前に、日展の歴史を振り返っておきましょう。

日展のルーツは、1907年に開催された文部省美術展覧会(文展)で、その後、帝展(帝国美術院展覧会)、新文展(新文部省美術展覧会)、そして、戦後の「日展」へと名称を変えながらも、日本の美術界の中核として君臨してきました。